『いぬ』ジャン=ピエール・メルヴィル

友情か裏切りか、ミステリー風ノワール

いぬ

《公開年》1962《制作国》フランス
《あらすじ》4年の服役を終え出所したモーリス(セルジュ・レジアニ)は、昔の仲間ジルベールの元に向かう。服役中に妻が殺され犯人が見つからないままのモーリスは、ジルベールが怪しいと睨んでいて、ふと視線が合った瞬間、妻殺しの疑念が確信に変わり射殺してしまう。その場から宝石と現金を奪って逃げたモーリスは、それを拳銃と共に空き地のガス灯の下に埋めた。
モーリスは新しい愛人テレーズと暮らしていて、そこへ友人のシリアン(ジャン=ポール・ベルモンド)が金庫を開ける道具を持って訪れる。夜になり、モーリスと仲間のレミは二人で、老資産家宅に強盗に入った。同じ頃、シリアンは一人残されたテレーズの前に現れ、突然彼女を殴って縛り上げ、モーリスの仕事場を吐かせた。
モーリスとレミが金庫開けに取り組んでいると、何者かの通報を受けて現場に急行したと思われる警官に包囲され、逃げる途中でレミは殺されモーリスも傷を負った。
モーリスが目を覚ますとそこは仲間のジャンの家で、ジャンの妻アニタが介抱していた。今回の仕事の失敗は、シリアンが密告したものと考えた彼はシリアン探しに外に出る。宝石等を隠した場所の地図をアニタに託した。
シリアンが警察に拘束された。強盗事件で死亡したレミ以外の首謀者は誰か、その後に殺されたテレーズの事件の犯人、ジルベール殺しの犯人に係る密告者についても尋問されるがシラを切った。しかしモーリス探しを手伝わされることになる。
やがてモーリスは呆気なく逮捕され、彼が警察の尋問を受けている頃、シリアンは手に入れた地図で空き地の宝石類を掘り起こしていた。モーリスは刑務所に送られ、同房になったカーンという大男と知り合う。
一方、シリアンはジルベールの仲間ヌテッチオが経営するクラブを訪れ、以前はシリアンの恋人で今はヌテッチオの情婦になっているファビエンヌに再会してヨリを戻した。ファビエンヌの力を借りてヌテッチオの店に忍び込んだシリアンは、ヌテッチオを待ち、その手下のアルマンも呼び出して、二人を射殺して宝石を巡る殺し合いのように細工した。
その後、シリアンはモーリスとジャンに会って事情を説明した。友人の刑事から警察の女スパイの情報を得ていたシリアンは、それがテリーズだったため、彼女を脅して居場所を突き止め、警察との衝突を回避させようとしたが間に合わず、傷ついたモーリスを救い出した。そしてテリーズを始末したと言う。
シリアンはこの世界から足を洗いファビエンヌと暮らすと言って去った。その直後、モーリス宛てに殺害実行の電話が入る。実は彼は獄中でカーンにシリアン殺害を頼んでいたのだ。モーリスはシリアンを殺させてはならないと彼の後を追うが、うかつにも追い越してしまい、間違って自分が撃たれてしまう。一足遅れて帰ったシリアンも、カーンとの相撃ちで倒れた。



《感想》誰が密告者(いぬ)か、それが分からないまま物語は複雑に絡み合って展開し、怪しげなシリアンの行動が謎のまま進行するため、暗に彼が「いぬ」ではないかという印象を持つが‥‥。
緻密な脚本だとは思う。だが登場人物過多で関係性が見えない、経緯や背景が語られず脈絡が掴めない、悶々としているうちシリアンから事情説明を聞かされやっと「なるほど!」と納得させられた。このミステリー仕立ての煩雑すぎるプロットと省略のテクニックが本作の魅力になっていることに違いはないが、観終わってもなおスッキリせず、男の友情譚に涙することはなかった。
しかし、光と影のコントラストが際立つスタイリッシュで美しいモノクロ映像とか、そこから醸し出されるノワールの雰囲気には魅了される。独特の暗く張り詰めた緊張感があって、出てくる男たちがどことなくダンディでカッコよく見える。容姿の端麗さというより影を背負った男の哀愁のようなものだ。
裏社会でしか生きられない不器用な男たちの裏切りと信頼、孤独と非情、そして切ない最期には迫るものがあった。

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投稿者: むさじー

映画選びのモットーは温故知新、共感第一、偏屈御免、です。感情を揺さぶられる、そんな映画との出会いがファン最大の喜びだと思っています。 「My Favorite Movies 1001」を目指します。