『ヤクザと家族 The Family』藤井道人 2021

任侠と人情で描く男の生きざま

ヤクザと家族 The Family

《あらすじ》1999年。チンピラの山本賢治(綾野剛)は、覚醒剤に手を出して命を落とした父親の葬式を出した。幼い頃に母を亡くして天涯孤独となった山本には、細野(市原隼人)、大原(二ノ宮隆太郎)という遊び仲間がいて、偶然出会った覚醒剤の売人を殴り、金と覚醒剤を奪って覚醒剤は海に捨てた。
そんな三人が馴染の食堂で飲んでいると、暴力団柴咲組組長の柴咲(舘ひろし)が現れる。実は食堂を営む愛子(寺島しのぶ)の亡き夫は柴咲組若頭で、敵対する侠葉会との抗争で命を落としていた。そこへ、拳銃を持った何者かが柴咲を襲撃し、その襲撃者を山本が叩きのめして危機を救った。
後日、柴咲組員・中村(北村有起哉)の迎えで、事務所に招かれ組に誘われるが拒否し名刺だけ受け取った。その帰り、山本は侠葉会組員に拉致される。
実は先日奪った覚醒剤は侠葉会のもので、三人ともリンチを受け香港に売り飛ばされようとするが、柴咲の名刺が見つかり、抗争を避けたい侠葉会は山本らを解放した。柴咲組に迎えられた山本らは正式に組員となる。
2005年。柴咲組組員として街の顔役になった山本は、キャバクラで6年前の侠葉会因縁の相手・川山と鉢合わせをし、諍いを起こし怪我を負わせた。その時、山本の傷の手当てをしてくれたホステスの由香(尾野真千子)に好意を持ち接近した。
翌日、日頃から対立状態にあった柴咲組と侠葉会は一触即発の事態に陥り、侠葉会を仕切る加藤(豊原功補)と柴咲との話し合いは決裂した。そして、柴咲と山本が乗った車が侠葉会組員に襲撃され、運転していた大原が身代わりになって命を落とした。
山本は一人仇討ちに向かい、侠葉会の川山に銃を向けたその時、柴咲組若頭となった中村が駆け付けて川山を刺し、柴咲組に必要な中村を庇って山本は罪を被った。その夜、山本は由香の部屋を訪れ、二人は結ばれた。
2019年。14年の刑期を終えて山本は出所した。「暴対法」の影響で、柴咲組はすっかり弱体化し、柴咲はがんに冒されていた。友人の細野は堅気の仕事に就いていたが、“5年ルール”の縛りで不自由な生活をしていて、山本との関わりを避けるようになっていた。
一方、山本が可愛がっていた愛子の息子・翼(磯村勇斗)は22歳になり、“半グレ”の立場で柴咲組・中村の手伝いをしていた。それは、中村が食うために止むを得ず手を出した覚醒剤の密売だった。そして探し当てた由香は市役所で働き、山本との間の14歳になる娘・彩(小宮山莉渚)と暮らしていた。
ヤクザの世界から足を洗った山本は、由香と彩の三人で暮らし始める。細野の紹介で堅気の仕事に就くが、元ヤクザのレッテルは付いて回り、二人の過去が同僚に知られてSNS上で拡散したことから、山本と細野は工場から追われ、由香も山本との関係を知られて、仕事と住まいを失った。
山本は愛子の食堂で、翼が父親の仇である加藤を狙っていることを感じ取る。翼は加藤らがいる店を襲撃するが、既に山本によって殺害された後だった。
全てを終えた山本は港の防波堤に来ていて、そこに細野が現れ、落とし前を付けると山本を刺した。全てを失った山本は笑顔でそれを受け入れ海に落ちた。
数日後、その防波堤を訪れた翼と彩が出会い、山本を忍んだ。



《感想》前半はチンピラがヤクザの親分に拾われて親子の盃を交わし“家族”になる話で、仇討ちと身代わりと自己犠牲の繰り返しで展開する。
後半になると時代は変わって、暴対法で古いヤクザは滅び、元ヤクザが更生しようとしてもSNS社会がそれを許さず“家族”が崩壊する様を描いていく。
センチメンタルな『仁義なき戦い』の印象を持った。脚本は笠原和夫をややウェットにした感じだが、笠原脚本の凄さは考証と裏付けの完璧さで比べるまでもない。ご都合主義という脚本のアナが散見され、その結果、リアリティを損なっている。
そして深作欣二ほどにはバイオレンスに走れなかった。しかし、人情味過多のように思える独特の緩さはドラマに柔らかさを持ち込んで、不思議と味わいのある世界を作り出している。メッセージは明確だし、新味のある面白いドラマになった。
私としては、以前の『新聞記者』より評価したい。同作は政治絡みの難テーマに真摯に取り組むという熱意は伝わってくるものの、ドラマとして迫ってくるものがなかった。本作には、重層的なドラマを作ろうという意欲とその成果が見える。

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投稿者: むさじー

映画選びのモットーは温故知新、共感第一、偏屈御免、です。感情を揺さぶられる、そんな映画との出会いがファン最大の喜びだと思っています。 「My Favorite Movies 1001」を目指します。