『海辺の家族たち』ロベール・ゲディギャン

崩れかけた家族の再生物語

海辺の家族たち

《公開年》2017《制作国》フランス
《あらすじ》南仏マルセイユ近郊の海辺の家で老後を送るモーリスは、ある日激しい心臓発作に襲われ倒れた。そのため、離れ離れに暮らしていた子どもたちが集まることになる。
パリで女優として活躍する末っ子のアンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)が20年ぶりに訪れたのを、父のレストランを継いだ長兄アルマン(ジェラール・メイラン)が出迎え、悠々自適に暮らす次兄ジョゼフ(ジャン=ピエール・ダルッサン)は歳の離れた若い婚約者のベランジェ―ル(アナイス・ドゥムースティエ)を連れて来ていた。ジョゼフはベランジェ―ルから別れを切り出されていて、二人はよそよそしい。
アルマンから遺産相続の話を切り出し、父親はアンジェルには多く残していると言い、アンジェルは3等分でいいと答える。20年前、俳優という仕事柄、娘を父親に預けていて、父親が目を離したすきに娘が海に落ちて溺死したという過去があった。
隣家にはマルタンとスザンヌという老夫婦が住んでいて、その息子で医師をしているイヴァンもよくモーリス宅を訪れ、近所付き合いをしている。
また、漁師のバンジャマンという30代男性が現れ、親子ほども歳の離れたアンジェルに愛を打ち明け、アンジェルに冷たくあしらわれている。
そんなある日、事件が起こる。マルタン夫妻が自ら命を絶ったのだ。イヴァンが見つけ、モーリス宅の家族も集まる。「どちらか残れば不幸になる。一緒に逝きたい」という遺書が残され、皆呆然として二人を見つめた。
どんなに冷たくされてもバンジャマンのアンジェルへの想いは冷めず、根負けしたかのように彼の家を訪ねたアンジェルは、部屋中に貼られた彼女のポスターに圧倒されて、その夜二人は結ばれた。
ある日、海辺で不法移民の船が見つかり、軍兵士や警官が不審者捜索にやってきた。その時は何の異変もなかったが後日、アルマンが山の茂みに隠れている難民の子ども3人を見つける。家に連れて帰り、食事をさせ、皆で風呂に入れた。アンジェルは子どもたちのために、封印していたクローゼットを開けて娘の衣服を着せ、娘のベッドで眠らせた。母親の笑顔が戻った。
軍や警察に知らせることなく、難民の子どもを匿うことにした三兄妹に変化が訪れる。アルマンは子どもたちのために食事を作り、ジョゼフはベランジェ―ルへの想いを断ち切り、彼女を望み通りに解放しようと決めた。そしてこの地で著作に取り組み、兄と共に父親の面倒を見ることにした。
アンジェルはツアーをキャンセルし、バンジャマンの気持ちを受け入れ、しばらくは(2か月か20年かは分からないが)この地に住むことを決めた。
高架橋の下、三人は子どもの頃のようにお互いの名前を空に向かって叫んだ。



《感想》南仏の海辺の家に、父との最期の日々を過ごすため三人の子どもたちが集まった。若き日はこの地で青春を謳歌した兄妹たちも人生の黄昏を迎え、かつては栄えた海辺の別荘地がうら寂しい漁村に変わるように、彼らの人生と重なって映る。
互いに打ち解けることなく、それぞれが胸に秘めた過去を持って憂鬱で重苦しい時間を過ごすが、徐々に過去の確執が明かされていく。そして思いがけない事件に遭遇して、たそがれた人生に希望が訪れ、未来が開けてくる。
海辺の町の少し湿り気のある空気感、ゆったりと流れる時間、じんわりと沁みる家族の再生物語だった。
ただ一つ理解し難いのが隣人老夫婦の自死。生活困窮に直面しても子どもの世話になりたくないという心情は理解できるものの、自死という選択は遺族に心の傷を残すだろうし、これが大騒ぎにならずすんなり受け入れられるというのも不思議な世界のように思えた。そもそも、この家族の物語に必要なエピソードだったのか、これで何を伝えたかったのか疑問でしかない。
フランスの「尊厳死、安楽死」関係の動きをみると、それまで安楽死反対の声が強かったフランスで2016年、末期患者に対する「ソフトな安楽死」を認める法律が制定されたとのこと。その論議を踏まえたエピソードの挿入ではないかと推測するが、登場する老夫婦は末期患者ではないし、唐突にして安易な描き方のように思えた。

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投稿者: むさじー

映画選びのモットーは温故知新、共感第一、我流偏屈、です。感情を揺さぶられる、そんな映画との出会いがファン最大の喜びだと思っています。 「My Favorite Movies 1001」を目指します。