『孤狼の血 LEVEL2』白石和彌 2021

ヤクザ対刑事、孤狼二人の闘い

孤狼の血 LEVEL2

《あらすじ》1991(平成3)年の広島県呉市。刑事の日岡(松坂桃李)は3年前、先輩の大上刑事と共に、策を弄して地元暴力団の五十子会と尾谷組を和解させ、抗争を終結させていた。
だが五十子会の上林(鈴木亮平)が出所し、束の間の平和が一変する。服役中の恨みから、看守の神原の妹でピアノ講師の千晶を殺害した。上林は刑務所においても反抗的で、所では模範囚にでっち上げて3年で厄介払いにしていた。仁義を唱え、組織に刃向かう狂暴男だった。
捜査本部が置かれ、県警管理官の嵯峨が指揮を執り、召集された日岡は公安出身の瀬島(中村梅雀)と組んで捜査に当たる。当初から上林の犯行への関与が疑われたが、証拠不十分で検挙は見送られた。上林の過去を探った日岡は、彼が少年期に犯した両親惨殺事件の「眼球を抉る」手口が共通することから、上林の犯行と確信する。
上林は、かつての親分・五十子の仇を討って落とし前をつけようと、組織の親分衆に働きかけるが、ビジネスに忙しい彼らは誰も動こうとせず、その親分衆を次々に殺害していった。そして五十子会の看板を上林組に替え、上林組と尾谷組の対立が勃発していく。
そんな中、日岡は、自分を兄のように慕う近田幸太(村上虹郎)をスパイとして上林組に送り込み、上林の動向を探っていて、上林の身内殺害の情報を把握していた。
しかし、日岡と上林の動向を執拗に嗅ぎまわる記者の高坂(中村獅童)の密告により幸太がスパイの疑惑を持たれ、嘘の情報で踊らされた上で、上林に殺されてしまう。幸太の姉の真緒(西野七瀬)は、恋人の日岡を信頼して弟を預けていたので、彼を激しく責めた。
自身を責めて落ち込む日岡を相棒の瀬島は慰め、過去の事件を糸口に抗争を止めようと提案し、日岡から3年前の五十子会長殺害に加担していたことを告白させる。しかし、瀬島は嵯峨管理官のスパイで情報が流れた。
日岡は、高坂記者から「物証がありながら逮捕しないのは上林を泳がせているから」と聞かされ、確認しようと瀬島の部屋を訪ねると、そこはもぬけの殻でスパイであることを悟った。
日岡は高坂を巻き込んで、「県警が容疑者を隠蔽」と新聞に事件の真相を暴露した。それを読んだ嵯峨は激怒し日岡を警察に軟禁するが、上林組の尾谷組襲撃を聞いた日岡は隙を突いて脱出した。
上林がトラックで尾谷組を襲撃し、その銃撃戦の中、日岡は上林を誘うようにしてカーチェイスを繰り広げ格闘の末に、二人とも駆け付けた警察官に拘束される。しかし、日岡は隙を突いて嵯峨の拳銃を奪い上林を射殺した。
この顛末は公表されないまま、日岡は山奥の駐在に左遷された。一方、真緒は弟の死に関与した一人、瀬島に復讐すべく、酔った彼を道路に突き飛ばして轢死させた。

《感想》前作では、大上(役所広司)の汚職まみれの制御不能な悪行が、実は裏社会の抗争終結に繋がっていたというストーリーだったが、そこには裏社会なりの組織のメカニズムが機能していたから成り立ったもの。本作では、それを打ち砕く狂暴モンスターが登場して、悪徳刑事が築いた秩序が崩れていく‥‥。
前作同様、深作実録映画へのオマージュを感じさせるが、人情話めいた奥行きや悪から見える人間性のような要素は薄れて、バイオレンス&アクション映画に終始し、面白いのだが単調で長尺に感じた。
何より組織間抗争が抜けていて、知的謀略は皆無。腕力+狂暴性による圧だけで突っ走る感があって、「出る杭は打たれる」組織のメカニズムが全く働かない不思議なヤクザ世界だった。加えて、ストーリーがチグハグというか腑に落ちない点が多々あり、脚本の粗さを感じた。
改めて思うのは、前作における役所の存在がいかに圧倒的だったことか。
松坂&鈴木では軽く薄くなるのは止むを得ないとして、勝るのはスピードと運動量。悪趣味でえげつない点でも負けていない。ライバルは韓国ノワールと心すべし。そんなエールを送りたくなる映画だった。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、映画選びのモットーは温故知新、共感第一、ジャンル無節操、です。 映画は時代と人生を映す鏡。心に響くドラマと愉悦を求めて、偏屈映画ジーサンをやっています。ボケ防止のレビューを書きながら。