『あなたの旅立ち、綴ります』マーク・ペリントン

愛すべき頑固オババの人生訓

あなたの旅立ち、綴ります

《公開年》2017《制作国》アメリカ
《あらすじ》ハリエット(シャーリー・マクレーン)は広告業界で成功したが、夫とは離婚し、娘は家を出たまま音信不通で、80歳を超えた今は豪邸で一人暮らしている。
ある日、新聞の訃報を見て、自らの死とその訃報記事に思いを巡らす。そして旧知の新聞社を訪ね、訃報記事ライターのアン(アマンダ・セイフライド)に自分の訃報記事を書いて欲しいと強引に頼み込む。
断り切れないアンは、ハリエットから知人のリストをもらい記事を書くための取材を始めるが、聞かれるのはハリエットに関する悪口ばかりで誰からも良いコメントがもらえない。離婚した夫エドワードは「彼女はいつも自分が正しいと思う女性」と言い、それを伝えるとハリエットは怒り、喧嘩になった。
そんなハリエットがアンに、良い訃報記事を書くための模範を聞かせる。①良い家庭を持ち、②同僚から尊敬され、③恵まれない人に貢献し良い影響を与え、④特別な業績を示すワイルドカードがあること、だという。
翌日、二人は問題児が集まる地域センターに行って助けの必要な子どもを探し、生意気で反抗的な少女ブレンダ(アンジェル・リー)を見つけ、彼女を素直な少女に教育しようと決める。
一方、ハリエットがラジオと音楽に強い関心を持っていると知ったアンは、彼女にラジオ局のDJ になることを勧めた。ハリエットはラジオ局に強引に売り込み、責任者のロビンは、彼女の音楽知識と熱意に押されてDJ に起用した。
ハリエットが創設した広告会社SSLDとの関係も明らかになってくる。彼女の元部下ミューラーが訪れ、ハリエットが部下を怒鳴りまくる古いビデオを見せられ、怖がる部下たちに会社を追われたことを知る。
アンから娘に会って和解することを勧められたハリエットは、三人でエリザベスに会いにいく。しかし彼女に笑顔はなく反抗的で、医師として幸せに暮らしていた。娘は「セラピーを受けて」と言い、母は「娘が幸せなら私はいい母親」と高笑いで返し、怒った娘は帰ってしまった。
病院の医師から診察結果を聞いたハリエットは、死期が近いことを覚悟するが、やり場のない思いから癇癪を起こし、深夜にアンを呼んだ。また、元夫エドワードに会ったハリエットは、夫から「結婚に後悔はしていない。娘から母には精神的な治療が必要、と助言があった」と聞き、エドワードに礼を言い寄り添った。
三人で音楽を楽しんでいる時に、ハリエットは静かに息を引き取った。葬式にはエドワード、エリザベス、ブレンダらが出席し、アンは訃報を読みスピーチをした。「最高の自分になれるよう挑発し、可能性を引き出してくれた」と。
アンは新聞社を辞め、念願のスペイン・アンダルシアに向かった。



《感想》終活映画というと、嫌われ者がいて、何かのきっかけで自分の人生を見直し、愛される善人へと変貌して最期を迎える、というのが定番だが、この頑固オババは折り合いをつけようとしない。人生の最終ゾーンに入って、孤独の不安とか他人の思惑とかに気付いても、反省して丸くなったりしない。
この潔さが小気味よい。さすが自由を尊ぶ個人主義の国、アメリカという気がする。
ただ、脚本は少し粗い印象を受けた。年寄りに夜の水浴びをさせる意図が理解できないし、追い出された会社への報復が看板の破壊とはいかがなものか。死という湿っぽさを少しでも払拭したいという試みにも思えるが、描き方が雑に過ぎる。だがその粗さを役者がカバーしている。
高飛車にしか振る舞えず、弱みを見せられないハリエットだが、自分を貫き通す女の生き様を見事に演じたシャーリー・マクレーンの表情からは、隠された裏の感情まで見えてくる。
そして、彼女から放たれる言葉はベタだが、背中を後押しする力強さがあって迷いがない。だから迷える人には刺さって、アンも触発されて我が道を選ぶ。心を通わせていく二人の表情を見ているとホッコリしてくる。
元夫と娘も良かった。母娘は再会するが、意地の張り合いから喧嘩別れして、やがて元夫に胸の内をさらけ出した母は、娘の気遣いを聞いてそっと寄り添う。一緒にいれば対立してしまうから離れて生きる方が幸せな、互いの秘めた想いだけで繋がっている関係もある。そんな家族のドラマでもあった。
話は荒っぽいが、奥の方に繊細さと滋味が潜んでいる。

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投稿者: むさじー

映画選びのモットーは温故知新、共感第一、偏屈御免、です。感情を揺さぶられる、そんな映画との出会いがファン最大の喜びだと思っています。 「My Favorite Movies 1001」を目指します。