『ジェントルメン』ガイ・リッチー

原点回帰したリッチーのクライム群像劇

《公開年》2020《制作国》イギリス
《あらすじ》冒頭、大麻王ミッキー・ピアソン(マシュー・マコノヒー)がロンドンのパブで席に着くと、背後から銃声が響き机に血が飛び散った。
そのミッキーは、先進国で大麻の合法化が進み、将来正当なビジネスとして利益が見込めると考え、表社会の事業者に売却して引退しようと考えている。
場面は変わって、ミッキーの右腕のレイ(チャーリー・ハナム)の家では、探偵フレッチャー(ヒュー・グラント)がボス・ミッキーの重大な秘密を掴んだと、その調査結果を基に大金を要求してきた。フレッチャーを雇ったのは、新聞編集長ビッグ・デイブで、ミッキーに恨みを持ち、彼のスキャンダルをネタに報復しようとしている。
映画は、フレッチャーが追ったゆすりネタをレイに聞かせる形で展開する。
ミッキーの大量の大麻栽培の方法は、公爵の豪邸の管理を引き受けその地下に広大な秘密農園を作るというもの。ミッキーはユダヤ人大富豪のマシューに売却の話を持ち掛けこの地下施設に案内した。
それから間もなく、中国人マフィアのジョージ卿の手下ドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)から買い取りの申し出を受けるがミッキーは断った。
しかし、格闘技ジムのトドラーズを名乗る集団が農園を襲って大麻を盗みネットにアップするという騒動が起こり、それを知って驚愕した彼らのコーチ(コリン・ファレル)は、大麻を返すよう命じてレイに謝罪した。
一方その頃、ミッキーに邸宅地下を提供している公爵の娘ローラが行方不明になり、ミッキーは彼女を連れ戻す仕事を引き受ける。ミッキーの指示でローラを見つけたレイは無事に彼女を救出するが、その騒ぎでロシア系マフィアの息子アスランがベランダから墜落死してしまい、ミッキーはロシア系マフィアからも命を狙われることになる。
その後、農場襲撃事件の裏側が徐々に明らかになる。中国マフィアが情報源と知ったミッキーはジョージ卿を脅迫するが、彼が手下のドライ・アイに釘を刺したところ逆に殺されてしまう。そして、本当の黒幕は事業を安く手に入れようとしたマシューだった。
マシューからドライ・アイに、そこからトドラーズに情報が流れ襲撃事件は起こった。ドライ・アイは更にマシューをも裏切ってビジネスを仕切ろうと、ミッキーを訪ね妻のロザリンドを暴行しようとした。
ここで冒頭のシーンに重なる。パブで妻と電話中のミッキーは、ロシア系マフィアの襲撃に遭ったのだが、間一髪でレイに助けられていた。そして妻に危険が迫っていると知った彼は妻の元に駆けつけ、ドライ・アイを射殺した。
一方、レイはフレッチャーの後ろ盾のビッグ・デイブを誘拐して、調査を止めるよう脅迫し、また農場の値下げ交渉をするマシューに対しミッキーは、彼の計略を暴き、逆に恐喝した。
しかしミッキーとレイの元に、ロシア系マフィアが襲いかかる。レイはコーチによって、ミッキーはトドラーズの手によって救われた。そして運よくピンチを脱したミッキーは、事業を続けることを決意した。

《感想》大麻王ミッキーとその右腕レイ。大麻ビジネスから引退しようとするミッキーの利権を巡って、ユダヤ人大富豪と中国マフィアが争い、ミッキーに恨みを持つ新聞編集長とロシア系マフィアが執拗に狙い、情報に踊らされた格闘技ジムのチンピラ集団とコーチが奔走し、探偵フレッチャーは掴んだネタでゆすろうとする。
映画は、裏取引を持ち掛けた探偵が「映画のシナリオ」のように、掴んだ情報を語りテンポ良く展開するが、絡んでくる人物は多いし、時間軸は揺れるし、形勢が二転三転するので結構理解に苦しむ。全体の相関図が必要なくらいで、少し絞り込んでもと思うが、その緻密な脚本は後からジンワリと面白さが見えてくる。
「子どもは刺し、女は撃ち、若造は殴る。だが、大人は頭で戦う」。中年男の渋さ全開で、悪党たちの騙し合いがスタイリッシュに描かれる。彼らの本心の読めない会話もナレーションの語り口も秀逸。
悪趣味な持ち味も満載で、初期の『ロック、ストック&‥‥』『スナッチ』で見せたブラックな笑いとセンスが甦ったようだ。とにかく面白い。
何となく不完全燃焼感の残るエンディングだったので、続編があるのかも知れない。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、映画選びのモットーは温故知新、共感第一、ジャンル無節操、です。 映画は時代と人生を映す鏡。心に響くドラマと快楽を求めて、“映画バカ”をやっています。