『懲役十八年』加藤 泰 1967

任侠+実録で描く戦後混乱期の生きざま

《あらすじ》敗戦の混乱が残る昭和22年、元海軍大尉の川田(安藤昇)と副官の塚田(小池朝雄)は、戦死者の遺族を守るため、旧軍隊の倉庫を押さえている外国人から食料を強奪し、闇物資として遺族たちに与えていた。
危険な日々だったが、いつの日か闇市に代わるマーケットを建設しようと二人は夢見ていた。その遺族会事務所に、川田の部下で戦死した石岡少尉の妹・比佐子(桜町弘子)が訪れ、川田と比佐子は互いに秘かな思いを育んだ。
ある日、川田と塚田は銅線を盗もうと中国人の工場を襲撃したが、米軍と警察に追われ、塚田は逃げたものの、川田は捕まり刑務所に送られた。
刑務所には横暴な刑務官・般若(若山富三郎)がいて、筋を通そうとする川田は騒動を起こして懲罰を受けたりしたが、いつしか囚人たちの親分格に祭り上げられる。塚田は比佐子を連れて面会に来て、川田は塚田がマーケットの運営に当たっているものと信じていた。
昭和27年、川田の監房に少年院上がりだという石岡健一(近藤正臣)が入ってきた。健一は比佐子の弟だった。それを知った川田は、般若の力を借りて健一と比佐子を秘密裏に会わせた。
川田は「元特攻隊員の母、抗議の自殺」の新聞記事を目にし、塚田が遺族会を立ち退かせて、やっているのはマーケットではなく、塚田組という特飲街のボスにおさまっていることを知る。
川田が仮釈申請したことを知った塚田は、自分の過去を知る川田を恐れ、般若に川田が出られない工作をするよう持ち掛け、般若は健一に拳銃を渡して「兄を殺したのは川田」とけしかけた。
刑務所の野球大会の日、健一は拳銃で川田に重傷を負わせ、その拳銃を般若に恨みを持つ服役囚の大杉(水島道太郎)が奪って、般若を射殺して自殺した。
入院中の川田は、弟の所業の詫びに訪れた比佐子から塚田の策略を聞かされるが、必死に怒りをこらえた。一方、川田に会いに行った比佐子に疑いを持った塚田は、沖縄に売り飛ばすと脅し、健一に再び川田殺しを命じた。
川田は所外の病院に移されてまもなく、車を奪って逃走し塚田組に向かった。同じ頃、健一も業者のトラックに隠れて脱走し、姉を救うべく塚田組に向かった。
川田は監禁されていた比佐子を救い出し、健一に刑務所に戻るよう諭して、塚田を追った。川田は塚田と刺し違えて死ぬつもりだった。
「時代は変わったんだ」と言う塚田に、川田は「変わりたくないんだ」と叫んで自動小銃を乱射した。包囲した警官隊のサーチライトに照らされ、投降する川田の顔が浮かんでエンド。

《感想》監督加藤泰と脚本笠原和夫(森田新と共同)のコンビは本作のみで、両人には互いに一目置きながら反目してしまうような相性の悪さがあるようだ。
映画は戦後の混乱期、自らの戦争責任を償おうと、特攻隊の遺族のために命を賭けた男たちの物語だが、復興の混乱に乗じて私腹を肥やす塚田と、戦争後遺症を引きずったままの川田は袂を分かってしまう。塚田は「時代は変わったんだ」、川田は「変わりたくないんだ」と言い合って‥‥。
敗戦によって戦時中培ってきた価値観が一変してしまった、また自身も変わらざるを得ない状況におかれたその時、何を拠り所とするか。
もちろん、加藤と笠原が善玉と悪玉に分けられるわけではないが、映画の二人の対照性とどこか似ている、そんな印象を持った。
加藤は1916年生まれで従軍経験を持ち、笠原は1927年生まれで戦後に青春期を迎えた世代。また、笠原は加藤作品を“大正ロマンのヒューマニズム”と揶揄しているが、笠原は壁に詳細な年表を貼りだしてまで時代背景を、徹底した取材でリアリズムを追及するタイプなので正反対に見える。
本作では、加藤は前年の『男の顔は履歴書』に引き続き安藤昇という任侠キャラで映画職人の腕を見せ、笠原は多彩なキャラで群像劇の面白さを作り上げ、後の実録路線への移行を見据えている。
作品としては必ずしも傑作とは言い難いが、二人の個性がぶつかり合った“任侠風味の実録もの”といった過渡期の面白さが見える。
なお、小池朝雄の絶妙な豹変ぶりと、桜町弘子の昭和の色香が懐かしい。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、映画選びのモットーは温故知新、共感第一、ジャンル無節操、です。 映画は時代と人生を映す鏡。心に響くドラマと快楽を求めて、“映画バカ”をやっています。