全編PC画面で展開する斬新なミステリー
《公開年》2018《制作国》アメリカ
《あらすじ》妻のパムを3年前にがんで亡くしたデヴィッド・キム(ジョン・チョー)は、高校生の娘マーゴット(ミシェル・ラー)と暮らしているが、親子関係は良好とはいえない。
マーゴットが友人との勉強会で外泊した夜、デヴィッドは真夜中の電話に気付かずに翌朝を迎え、マーゴットから3回も着信があったことに気付く。
早速マーゴットに電話をしたが繋がらず、通っているはずのピアノ教室に連絡すると、半年前に辞めたという。同級生たちとキャンプに行く約束をしていたことを知るが、参加していなかった。
心当たりが尽きて警察に捜索願を出し、担当となった女性刑事のヴィック(デブラ・メッシング)から交友関係を調べるよう言われ、Facebookを探るが親しい友人はないことを知る。またピアノのレッスン料2500ドルがどこかの口座に振り込まれていた。
マーゴットは心の隙間を埋めるかのようにSNS上の見知らぬ人と繋がりを持っていて、中でも「Fish and Chips」というハンドルネームの女性と親密に交流していたことが明らかになる。その女性には、がんで闘病中の母がいるらしく、自身と似た境遇の彼女に共感しているようだった。
その後、マーゴットがしばしばバルボサ湖を訪れていたことが分かり、現地での捜索が行われるが、そこにマーゴットの姿はなく、湖からマーゴットの車が引き上げられ、車内から2500ドルが見つかった。
車内の写真に弟ピーターの衣服を見つけたデヴィッドは、弟にも関与の疑いを持つが、単にマリファナを吸い相談に乗るだけの間柄だった。
そんな時、ヴィック刑事から犯人が見つかったという報せが入る。その犯人はネット動画でマーゴットの殺害を自白し、自ら命を絶ったという。
このことはマスコミで大々的に報じられ捜査は終了するが、追悼サイトへのアップロードをしていたデヴィッドは、「Fish and Chips」を名乗る女性の顔写真がネット素材からの流用であることに気付く。そのことを知らせようと警察に電話をして、ヴィック刑事が担当を熱心に志願していたことを知り、更に彼女と自殺した犯人が一緒に写っている写真をサイトに発見した。
「Fish and Chips」の正体はヴィックス刑事の息子ロバートで、偽造写真で他人に成りすまして近づき、マーゴットから病院代と偽った2500ドルを送金させたが、返そうとして呼び出したロバートと正体を知って逆上したマーゴットが争いになり、マーゴットが崖から突き落とされたというものだった。
ヴィックス刑事は息子を庇うために隠蔽工作をして、自殺した犯人もかつて更生に携わった人物で、口封じのために殺害していた。ヴィックは逮捕され、現場の崖の捜索が行われて、マーゴットは奇跡的に発見、救助され、一命を取り留めた。
《感想》物語の全てがパソコン画面とニュース映像で進行するという新感覚のサスペンス映画で、チャットの文章を読み、ネット上の断片的な情報をつなぎ合わせて徐々に真相に近づいていく。
終始PC画面を覗くような緊張感を強いられ年配者にはキツイのだが、その展開にはハラハラさせられ、ドンデン返しの面白さも備えている。そしてテンポ良く、勢いがある。
加えて家族のドラマでもある。母の死をきっかけに出来てしまった溝を何とか修復しようとする父娘の姿があり、加害者側にも問題を起こした子をかばう母の愛が見えてくる。しかしこの家族ドラマの部分に、PC画面のみという手法の限界も感じた。
出来事は見えるのだが、人物像が見えてこない。人物の描き方が淡白で浅く、人間の存在感が稀薄で、共感を誘うように迫ってくる映像的な力がない。その結果、娘が抱えた心の闇、加害者側の事情を抱えた母子関係など表面的で深みに欠ける印象を持った。
また、真犯人割り出しの安易な展開とか、遺体捜索なしに報道や追悼式というあり得ない話など、ミステリーとしての無理も散見された。
とはいえ、観ている間はその映画世界に惹き込まれてしまうから不思議だ。
SNSを通しての人間関係のあり方とか今の世相が見えるのも面白いし、新たな可能性を探った意欲作だと思うが、数年後に観たら陳腐に思うかも知れない。
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