『イヴの総て』ジョセフ・L・マンキウィッツ

若い野望に振り回される演劇界の人間模様

イヴの総て

《公開年》1950《制作国》アメリカ
《あらすじ》アメリカ演劇界最高の栄誉セイラ・シドンス賞が新進女優イヴ・ハリントン(アン・バクスター)に与えられる。満場の拍手の中、イヴの本当の姿を知る数人だけは複雑な表情で彼女の受賞を見守った。
田舎から出てきた女優志望のイヴは劇場に通い詰め、劇作家ロイド(ヒュー・マーロウ)の妻カレン(セレステ・ホルム)に声を掛けて、大女優マーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)に紹介してもらう。
イヴを気に入ったマーゴは自分の付き人にして目をかけるが、イヴは次第に本性を現していく。マーゴの恋人である演出家のビル(ゲイリー・メリル)に接近し、ビルがイヴに傾いたことから、マーゴとビルの仲が一時険悪になった。
そんな中、カレンの助力があって、次の舞台でマーゴの代役にイヴが抜擢される。また、マーゴに隠れて批評家のアディソン(ジョージ・サンダース)に近づき、彼からも目をかけられる。
マーゴとビル、ロイドとカレンの4人が出かけ、帰る途中で車がガス欠となり、マーゴはその夜の公演に間に合わず、イヴが急遽代役を務めた。しかしそれはマーゴへの反感からカレンが仕組んだことだった。
その夜の演技を批評家は絶賛し、特にアディソンはイヴのコメントを交えて、マーゴの年齢を当てこすり、イヴへの賛辞を書き立てた。
批評家アディソンに近づきながら、演出家ビルにも誘いをかけるイヴだったが、ビルには拒絶された。ロイドとカレンもイヴのことで喧嘩になるが、そのうちカレンはイヴの性格に気付き始め、彼女への態度が冷たくなる。
そんなカレンにイヴは、本性むき出しで対立する。まずはアディソンの記事のコメントを詫びた上で、夫ロイドの次の舞台の主役を貰うことを持ち掛けた。マーゴの出演をわざと邪魔したことを暴露すると脅し、アディソンの記事を止められるのは私だけ、と言って。
更にイヴは夜中、友人からロイドに電話をかけさせて部屋に来るよう仕向け、色仕掛けで籠絡しようとした。
ロイドとの結婚を目論んだイヴだったが、カレンとアディソンが手を組んだことで計画は崩れた。アディソンはイヴの身の上話が全てウソだと見破っていた。
「俺たちは似ている。人の気持ちを踏みにじり、愛を知らない。だが野望と才能がある」。アディソンにロイドのことは諦めろと言われ、イヴはそれに従った。
冒頭シーンに戻り、授賞式から帰宅したイヴは、かつての自分のような演劇少女が部屋に侵入していることに気付く。その女子高生はイヴが去り一人部屋に残ると、イヴのドレスを羽織って受賞の像を手に、未来を夢見るように鏡に向かって深々とお辞儀をした。

《感想》自分の野望に向かってなりふり構わず突進する若手女優イヴと、彼女の野望に翻弄される舞台関係者の騒動を描く群像劇で、主要人物6人の誰にも肩入れせずに淡々と展開する。
大女優マーゴは我が強く傲慢だが、年齢からくる不安と結婚という安定を求める気持ちの間で揺れ、劇作家を夫に持つカレンは名士夫人として夫を支えているが、夫抜きの自分というアイデンティティに悩んでいる。
イヴの登場によって、それまでのさざ波が大波になって、友情で結ばれていた4人に亀裂が生じるが、やがて丸く収まり関係を修復して言う「性悪のイヴだが、彼女のお陰で4人の友情が戻った」と。
結局イヴは、裏で巧妙に操る曲者批評家アディソンに操縦されながら、スター街道を歩んでいくのだろう。ラストでは、かつてのイヴを彷彿とさせる更に若い女性が登場し、この手の話はエンドレスか、とうかがわせる。
ドロドロした愛憎関係を描きながら、ある意味ハッピーエンドのようでもあり後味は悪くない。
そして、女性の計算高さと怖い本性を見せながら、棘のある会話の応酬はシニカルで機知に富んでいて、その風刺劇は演劇界に限ることなく、永遠に色あせない人間模様のようでもある。
多少大仰だったりして時代を感じさせるものの、この時代にこれだけ巧みな脚本による緻密な心理ドラマが出来ていたことに驚く。演技陣では、とりわけベティ・デイヴィスの怪演というべき存在感が凄い。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操、が映画選びのモットーです。 映画を通して人生を見つめたい、そんな思いで“映画の旅”をしています。