ブラックな笑いとセンスで魅せるクライム群像劇
《公開年》1998《制作国》イギリス、アメリカ
《あらすじ》主な登場人物は次の4組。
A)チンピラ4人組:エディ(ニック・モラン)、ベーコン(ジェイソン・ステイサム)、トム(ジェイソン・フレミング)、ソープ(デクスター・フレッチャー)で、盗品を売るなどして小金を稼ぎ、闇商人ニックと通じている。
B)賭博グループ:元締めのハリーは銃の収集家でもあり、部下にはバリー、子持ちの取立屋クリスがいて、犯行下請けにベンツ兄弟がいる。
C)ギャング:エディの隣室をアジトにするドッグ一味で、大麻の売人から大麻と金を強奪する計画を持つ。
D)マフィアと大麻売人:ボスはロリーで、配下に大麻の栽培・売人をやるウィンストンらがいる。
ロンドンの下町に暮らすエディら4人組は一獲千金の賭けをするが、賭博の元締めハリーのイカサマに遭って巨額の借金を背負って途方に暮れ、隣室に住むギャングが大麻の売人を襲撃する計画を耳にして、それを横取りしようと思いついた。
一方、銃の収集家であるハリーは部下のバリーを介してベンツ兄弟に古銃を含む銃の強奪を依頼し成功するが、兄弟が2丁の古銃をボロだと思ってニックに売り、エディらの手に渡る。その古銃こそハリーが狙っていた物だったため、ハリーは古銃を取り戻すよう兄弟に命じる。
強奪計画の通り売人から大麻と金を奪ったギャングのドッグ一味は、部屋に戻ると待ち伏せしていたエディらに銃で脅され全て奪われた。
大麻を奪ったエディらは闇商人ニックを通じて、マフィアのロリーにサンプルを見せるが、配下のウィンストンらの物と分かってロリーの怒りを買う。
一方、金と大麻を奪われたギャングのドッグは、アジトの隣室に仕掛けられた盗聴器を見つけ、エディらの仕業だと気付いた。
その頃、エディたちはバーで酔いつぶれ、ハリーはエディからの返済連絡がないので、取立屋クリスに脅すよう指示した。
怒り狂ったロリーは部下を従えてエディの部屋に向かい、エディたちを待ち伏せていたドッグ一味と銃撃戦になる。銃と金を持って難を逃れたドッグは、取り立てに来たクリスと鉢合わせして、銃と金を奪われる。
クリスは銃と金をハリーに渡し、報酬を受け取る。ところが銃を持つクリスの後をつけてきたベンツ兄弟が、銃を手にしているのが依頼主のハリーと知らず、銃を奪おうとして相撃ちになってしまう。
一方、部屋に戻ったエディたちは、金も大麻も消えて血の海となった自室を見て絶句し、ハリーに呼び出しを受けていたエディが彼の元に行くと、そこも死体だらけで金を持って車に戻った。
クリスが車に戻るとギャングのドッグに脅かされ、クリスはドッグを乗せたまま走って、停車していたエディの車に激突させ、ドッグもエディも気絶させて金を奪った。
後日、金貸し業になるクリスはエディにカタログを渡した。証拠隠滅のため処分しようとしていた古銃には高値がついていることを知って、エンド。
《感想》大麻の売人から金と大麻を強奪しようと狙うギャングがいて、それを横取りして賭博の借金を返そうとするチンピラがいて、そこに賭博元締めとマフィアが加わって、大麻と現金、骨董品の古銃が人から人へと渡っていく。
登場人物が多すぎて、そのキャラや関係性が理解できるまで時間がかかるが、ストーリーは思いがけない方向に転がり、やがて繋がり収束する。
ギャングは隣人に狙われているとは知らず、チンピラは奪った大麻がマフィア配下の物とは知らず、下請けの強盗は依頼主の顔を知らなかった。
そこに鉢合わせの“偶然”も加わって、全く先が読めない。ご都合主義は否めないが、ワクワクの面白さがバカバカしさを大きく上回る。
登場するのが強欲キャラばかりで、結局最もご利益を得たのは、分をわきまえている子煩悩な取立屋だった。銃の価値を知りながら奪おうとせず、譲った相手にその価値を教えてあげる親切、シニカルな視線が見える。
練られた脚本とブラックな笑い、テンポの良さとオシャレな演出。本格的なクライムものとは違った味わいがあるクライム・コメディの傑作である。
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