『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』レジス・ロワンサル

謎解きは困難だが、迷宮に誘い込まれる

《公開年》2019《制作国》フランス、ベルギー
《あらすじ》世界的大ベストセラー『テダリュス』三部作の完結編の出版権を獲得して世界同時発売を目論む出版社社長エリック(ランベール・ウィルソン)は、事前の情報流出を防ぐために、9か国から集めた翻訳家をフランスの屋敷の地下室に集めた。
そこで外部との接触を一切禁じた監禁状態で、毎日翻訳作業をすることになる。
英語のアレックス(アレックス・ロウザー)は脱力系若者、ロシア語のカテリーナはレベッカ風、デンマーク語のエレーヌは作家志望の子持ち女性、ポルトガル語のテルマは坊主頭にタトゥの女性、他にギリシャ語のコンスタンティノス、スペイン語のハビエル、ドイツ語のイングリット、中国語のチェン、イタリア語のダリオがいた。
【2か月後】刑務所でエリックがアレックスに言う「どうやって盗んだ!」。
【現在】作業開始から間もなく事件が起こる。原稿の冒頭の一部がネットに流出し、犯人からエリック宛に大金を要求する脅迫メールが届いた。
犯人は9人の翻訳家の中にいるはずと睨んだエリックは、徹底した調査を開始し、その中で、エレーヌの部屋から手書きの原稿が発見されるが、それは彼女が執筆中の小説で、エリックはそれを酷評し燃やしてしまう。
やがて犯人の予告通り、次の100ページも流出して、それに激高したエリックは銃で皆を脅し、地下室の水や電気、食事まで止めて、翻訳家たちを精神的に追い詰めていく。
【2か月後】刑務所に収監されているエリックに面会に来たアレックスは、原稿は翻訳家たちが屋敷に入る前に、数人の翻訳家仲間によってすり替えられコピーされていていたことを打ち明ける。
【現在】そして遂に犠牲者が出る。エレーヌが絶望の末、自殺しているのが発見され、仲間たちに恐怖と緊張が走る。
そんな中、更なる脅迫メールが届き、苛立つエリックは翻訳家たちに銃を向けて迫り、堪え切れなくなったアレックスが口を開く「自分がロンドンの部屋から遠隔操作している」と。
しかし緊迫した睨み合いは収まらず、追い詰められたエリックは遂にカテリーナに向けて、続いてアレックスに向けて発砲した。エリックは警備員に抑えられ、地下生活は幕を閉じた。
【2か月後】収監中のエリックに面会に来たアレックスは、警察が監視する中、「僕が著者のオスカル・ブラックだ」と真実を告げる。するとエリックは「嘘だ!オスカルは私が殺した」と思わず殺害を認めてしまう。
実は、オスカルはアレックス自身で、エリックがオスカルと信じていた老人ジョルジュは、アレックスの代理としてオスカルを演じていたのだ。
本屋の店主ジョルジュによってアレックスは文学の才能を見出され、その著作はベストセラーになるが、アレックスは出版のビジネスをジョルジュに託していて、出版契約で揉めたエリックがジョルジュを殺害していた。
敬愛するジョルジュの復讐を果たしたアレックスは、刑務所を後にした。

《感想》翻訳家たちが軟禁された地下室での出来事と、それから2か月後の刑務所でのやり取りが交互に進み、徐々に真相を明らかにしていく。
中盤で、電車内で原稿を盗んでコピーするという事件がスリリングに展開するが、その後にどんでん返しが待っていた。というより、エピソード自体が、アレックスが仕組んだカモフラージュで、翻訳の時点より過去の出来事なのに時間軸をあいまいにしているので混乱させられる。
時系列で記すと、①アレックスの著作が大ヒットし、出版をジョルジュに任せる、②ジョルジュは出版のことでエリックと揉め殺される、③アレックスは英語以外の翻訳者を調べて協力させ、原稿コピー事件を敢行する、④フランスでの翻訳作業開始、となる。
オスカー・ブラックの正体も、この原稿コピー事件も、巧みなミスリードで迷宮へと誘い込まれてしまう。もはや謎解きはかなり難しい。
オシャレな映像と巧妙な脚本で十分楽しめるが、観終えると爽快感とモヤモヤ感が半々だった。
物語の逆転劇に比重が置かれ過ぎていて、複雑すぎる復讐劇は理解困難だし、少し無理もあるかな。でも面白いことは確かだ。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操、が映画選びのモットーです。 心に響くドラマを求めて、映画の中の人生をあちこち旅しています。