『インサイド・マン』スパイク・リー

キレよりも深い味わい、大人のサスペンス

《公開年》2006《制作国》アメリカ
《あらすじ》白昼のマンハッタン信託銀行の支店。ダルトン・ラッセル(クライヴ・オーウェン)をリーダーとする4人の強盗団は、揃いのつなぎを着てマスクとサングラスで顔を隠し、客や行員約50人を人質にして立てこもる。
ニューヨーク市警のキース・フレイジャー刑事(デンゼル・ワシントン)は上司からこの事件の担当を言い渡される。
一方、知らせを受けた銀行の会長アーサー・ケイスは、弁護士のマデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)を呼び、392番の貸金庫だけは守れと依頼した。
犯人たちは人質全員の携帯電話を没収し、自分たちと同じつなぎを着せてマスクをさせ、人質と犯人の見分けがつかないようにして、その上で、ジャンボ機の手配を要求した。
行内のダルトンは392番の金庫を開け、中の封筒と大量のダイヤ、ケース入りの指輪があることを確認し、封筒だけを取り出す。
警察を仕切るフレイジャーのところに、市長を伴ったホワイト弁護士が来て犯人との交渉を求め、ダルトンと話をするが、彼は依頼者のことも、依頼者が戦時中にナチスを利用し、ユダヤ人から搾取した金で銀行を創設した過去まで全て知っていて、封筒を見せられたホワイトは引き下がった。
代わってフレイジャーがダルトンに交渉して、行内の人質の様子を確認に入り、隙を見てダルトンの銃を奪おうとして失敗するが、犯人が人を殺さないという認識を持った。
ところがその直後、犯人は見せしめのように人質を射殺し、追い込まれた警察は人質を考慮してのゴム弾で突入作戦を開始する。
フレイジャーは盗聴器を仕掛けた犯人による作戦と気付くが間に合わず、入り口で爆発があり、その後同じ格好の人質たちが一斉に出てくる。人質と犯人の区別がつかないので、警察は全員の身柄を確保した。
行内に入った警察は、金庫の金が無事で、殺しはモデルガンと血糊による偽装と知った。取り調べでは犯人を特定できずお手上げになり、さらに何らかの圧力がかかり、上司から事件を葬るよう指示される。
フレイジャーはホワイトを訪ねケイト会長の秘密を聞くが彼女は口を割らず、ホワイトはケイトの秘密を守ることを条件に彼から多額の小切手を受け取った。
1週間後、地下の備品室の壁裏にスペースを作って隠れていたダルトンは、封筒と大量のダイヤを持って表に出て、入れ違いに392番の貸金庫を見たフレイジャーは、ケース入り指輪と「指輪を追え」のメッセージを発見する。
フレイジャーは、ケイトとホワイトへの捜査を開始する。そして家に帰り、ポケットに見知らぬダイヤを見つけ、銀行ですれ違った男を思い出して全てを悟りニヤリと笑った。

《感想》銀行強盗犯は、人質に自分たちと同じ服装をさせて紛れ込み、見分けがつかないようにして警察の手を逃れるが、映画の展開には、事件の進行の合間にその後の取調べシーンを挿入して、事件の顛末を少しずつ見せていく。
斬新な手口と謎解きが楽しめるが、犯人の目的はなかなか見えてこない。
そして金庫狙いの予想ははずれ、秘蔵の文書とダイヤだけを盗んで、銀行会長の過去の悪行を懲らしめる義賊のようなスマートさで完全犯罪に終わる。だが数々の謎に包まれる。
巧妙に仕組まれた謎もあり、単に脚本の“穴”もあるような気がする。
封筒の中身が戦時中の犯罪を記した文書ならば、会長はなぜ処分しなかったのか。あるいは、そんな文書を盗んでどうするのか。1週間も備品室の壁裏に潜むのは無理だろう、とか。
もしかしたら、見えない隣室で暴行を受けた銀行員もグルではないかと疑いの目を向けたり、これ見よがしの処刑シーンに驚いたら偽装で肩透かしを食ったり、騙される快感に浸れる。
時に「何か、おかしくないか?」と考えさせ、多くを語らないことがその裏やスキ間を探らせ、それら“謎や余白”も全て制作側が意図したもののように思えてくる。
それを明かさないまま終わった消化不良感は残るのだが、先が読めない巧妙な作りと淡々とした展開、会話も粋で大人のサスペンスは味わい深い。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操、が映画選びのモットーです。 映画を通して人生を見つめたい、そんな思いで“映画の旅”をしています。