『わが名はキケロ ナチス最悪のスパイ』セルダル・アカル

史実を背景に描くスパイのラブロマンス

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《公開年》2019《制作国》トルコ
《あらすじ》1918年、当時オスマン帝国の領土だったコソボ。セルビア軍のアルバニア人殺戮が行われる中、少年イリアスは両親と障害を持つ弟アリを殺されるが、敵軍にうまく取り入り、アルバニア人による制圧を成功させた。
1943年、トルコのアンカラ。第二次世界大戦においてトルコは中立を維持していたが、ドイツ、イギリスなどが味方に引き入れようと画策していた。
イギリス大使館の執事となったイリアス・バズナ(エルダル・ベシクチオール)は、裏でイギリスの情報をナチスドイツに売る仕事をしている。
一方、ドイツ大使館に勤め、公使モイズイッシュ(ムラ―ト・ガリバガオグル)の秘書をするコルネリア・カップ(ブルジュ・ビリジク)には障害を持つ子どもアグストがいて、折しもドイツ軍が障害者や精神病者を抹殺しようという“T4作戦”の情報を聞き、自分の家族情報が知れないよう画策する。
そんなイリアスとコルネリアが、街中で偶然知り合い、交際を始める。
イリアスはアグストにどこか亡くした弟アリの面影を見て、彼もなつくが、イリアスの素性をコルネリアは知らない。
やがてイリアスはイギリス側の機密書類の写真を撮り、モイズイッシュに高額で売りつけるようになり、コードネームをキケロと呼ばれた。
イリアスとコルネリアは幸せな日々を過ごしていたが、ある時コルネリアは、モイズイッシュに障害を持つアグストの存在を知られ、「助ける代わりに」と関係を迫られる。
そして、モイズイッシュとキケロの取引情報を耳にしたコルネリアは、イギリス大使館員にドイツ側スパイを売ることを条件に、母子のスイス脱出のためのパスポートを要求した。
大使館員と共に取引の車の後をつけたコルネリアは、突き止めたスパイがイリアスだったことに驚くが、素知らぬ顔で通した。
しかし、イギリス側は薄々感づいていた。そして、モイズイッシュもコルネリアがイギリスに通じていることに気づく。
踏み込んできたイギリス大使館員を射殺した二人だったが、次はドイツ大使館モイズイッシュらに捕らえられ、オーバーロード作戦の資料を要求される。
イリアスはそれを入手し、交換条件にコルネリアを取り戻すが、アグストは既に収容所送りになっていた。すぐにドイツ内務省の命令書を持って収容所に駆け付け、無事にアグストをガス室から救出した。
そして全てが明かされる。イリアスはトルコ共和国が戦争に巻き込まれないよう命じた諜報機関のリーダーで、ドイツへの情報提供を操作して、ドイツ敗戦へと追い込んだのだった。

《感想》第二次世界大戦中、中立を貫こうとするトルコを味方に引き入れようとする英仏独の攻防を背景に、“ナチス最悪のスパイ”となった男と、我が子を守るためスパイに身を投じた女のラブロマンスが描かれる。
史実を基にしているが、エンタメ性重視の作りで、サスペンスとして楽しめる。
また、女の息子には障害があり、男には障害児の弟を戦争で亡くした過去があった。ナチスの非道な行為から守ろうとする親の切実な愛がヒシヒシと伝わって、ヒューマンドラマの面も強調されている。
そしてスピード感を持って淡々と、かつスリリングに描かれる。
途中『カサブランカ』の上映シーンが挿入されるが、同じようにスタイリッシュでもあるし、暗澹たる結末にならず安堵した。
コルネリアを演じるブルジュ・ビリジクは初めて見るが、華があって愁いがある、魅力的な女優で印象に残る。
ただ、自国の歴史を背景にした映画のせいか、やや説明不足で、歴史に疎い者がエンタメ作品として観るには分かりにくい面があった。
トルコを巡る英仏独の攻防は見ているうちに理解できるのだが、ラストの戦局を操る情報操作、ドイツの紙幣偽造あたりは簡単に流されてしまったので、消化不良の感がある。
(2020年12月現在、WOWOW放送のみで、劇場未公開)

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操、が映画選びのモットーです。 心に響くドラマを求めて、映画の中の人生をあちこち旅しています。