『THE PROMISE 君への誓い』テリー・ジョージ

巧みで骨太な戦禍のメロドラマ

《公開年》2016《制作国》アメリカ、スペイン
《あらすじ》1914年、第一次世界大戦前夜のオスマン帝国は、多数派のトルコ人と少数民族のアルメニア人が共存していた。
アルメニア人青年のミカエル(オスカー・アイザック)は医師を目指し、婚約者で裕福な家庭のマラル(アンジェラ・サラフィアン)の実家から資金援助を受けて、イスタンブールの医科大学に入学した。
親戚のメスロブ家に居候を始めたミカエルは、そこでアルメニア人の家庭教師アナ(シャルロット・ルボン)に出会う。二人は互いに惹かれ合うが、ミカエルには婚約者マラルがいて、アナにはアメリカ人記者の恋人クリス(クリスチャン・ベール)がいることから、互いに想いを秘め、友人として振る舞う。
やがて第一次世界大戦が勃発。若者が次々と徴兵される中、ミカエルは学友で政府高官の息子エムレ(マーワン・ケンザリ)の計らいで徴兵は免れたが、トルコ軍のアルメニア人への差別や迫害は激化してきた。
ある夜、ミカエルとアナは騒乱に巻き込まれ、アルメニア人が隠れるホテルに身を寄せ、二人だけの時間を持つ中で一気に想いが募り一夜を共にする。
翌日、多数のアルメニア人が反逆罪で逮捕されたことを知り、ミカエルはエムレを頼ってメスロブを助けようとするが、エムレの父が激怒し、ミカエルを警察に引き渡して、エムレを軍に入隊させてしまう。
半年後、ミカエルは鉱山で強制労働を強いられていて、仲間が起こした爆発事故の混乱に乗じて、鉱山から脱出し故郷の村へ向かう。
その道中、ミカエルはアルメニア人が移送される列車に飛び乗り、川に落ちながら、やっと着いた故郷の村は荒らされていたが、両親は健在だった。
ミカエルとマラルは結婚して、山中の隠れ家で農耕生活を営み、やがてマラルが妊娠したことで、二人は両親の家に戻る。
そこに首都から逃れてきたメスロブの妻子が来て、アナとクリスがアルメニア人の孤児を国外退去させる準備をしていることを伝え聞く。
ミカエルはすぐにアナたちが滞在する野営地に向かって、アナと再会を果たし、家族の脱出への協力を求めた。快諾するが、ミカエルの結婚を聞いたアナは深く傷つき、そんなアナにクリスは黙って寄り添った。
それから間もなく、ミカエルとクリスは家族の元に向かい、道中でミカエルの家族を含む多くがトルコ軍に殺害される場面に遭遇する。死体の山から、生きていたミカエルの母とメスロブの娘イエヴァを連れて逃げる。しかし、囮役となったクリスは捕らえられた。
その後、ミカエルたち一行は、追われるアルメニア人の一団に合流して山に籠り、責めるトルコ軍を相手に戦った。
一方、トルコ軍に捕らえられたクリスはスパイ罪で処刑されようとするが、エムレが極秘裏にアメリカ政府にクリスの件を知らせたことで、アメリカ大使館が動き、クリスは釈放される。しかし、密告が発覚したエムレは処刑された。
トルコ軍の猛攻は激しさを増し、アルメニア人の一団は山を出て海岸に逃げた。そこにはクリスの要請を受けたフランス海軍の軍艦が待ち構えていて、アルメニア人はボートで次々と軍艦に乗り込んでいった。
しかし、アナが乗ったボートの近くに砲弾が落ち、アナは海に溺れてしまう。
1942年、アメリカで医師になったミカエルが、養子となったイエヴァの結婚式で、かつての悲劇に触れ、アルメニア人の誇りを語ってエンド。

《感想》第一次世界大戦中、オスマン帝国で起きたアルメニア人大虐殺を描いているが、隠蔽されたままの史実を明らかにしたいという制作者側の意図があって、その上に戦時下のメロドラマを重ねている。
ミカエルは資産家娘の婚約者がいながら、アナに恋をする。アナには、平和と正義を求めるアメリカ人記者の恋人クリスがいながら、同郷のミカエルに惹かれていく。そしてクリスは、アナがミカエルに惹かれていることに気づきながら、深く愛し黙って寄り添う。
この三角関係の恋模様が、思い入れを誘い戦争物語へと惹き込む作りになっていて、古典的だがうまく組み立てられた脚本だと思う。
だが映画は、戦争の狂気ともたらす不幸を真摯に描こうと努めているものの、民族紛争の背景、対立の理由にまではハッキリと語っていない。
この事実をトルコ政府は認めていないようで、あくまでアルメニア側の視点で捉えたものと理解しなければならないが、民族紛争における善悪は混とんとしていて、双方に言い分があるはず。
戦争と恋愛を描いたドラマとしては秀作だと思うが、根本にある「何故戦うのか」銃口を向ける明確なメッセージが欲しかった。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操、が映画選びのモットーです。 心に響くドラマを求めて、映画の中の人生をあちこち旅しています。