『ラスト・ムービースター』アダム・リフキン

偏屈老人の過去への旅と人生賛歌

《公開年》2017《制作国》アメリカ
《あらすじ》かつて映画スターだったヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は、今は年をとり体も不自由で、寂しい一人暮らしをしている。
ある日、「国際ナッシュビル映画祭」から特別功労賞受賞の招待状を受け取り、当初乗り気でなかったが、友人から、過去の受賞者にクリント・イーストウッドらがいることを聞き、行くことにする。
エコノミークラスの飛行機でナッシュビルの空港に到着したヴィックをポンコツ車で迎えたのは、主催者の妹でパンクな格好のリル(アリエル・ウィンター)で、彼女は往年のスターを知らず、無関心だった。
リルの運転で着いた先は安ホテル、案内された映画祭会場は場末のバーで、ヴィックは呆れるが、小さな会場は彼を歓迎するファンで溢れていた。
主催者のダグ(クラーク・デューク)と相棒のシェーンらが出迎え、ヴィックの功績を称賛し、写真とサインを求められた彼は少し気分を取り直した。
やがて彼の主演映画が上映されるが、プロジェクターで壁に映し出される映画に失望したのか、一人で酒を飲んでいると、リルが来て話しかける。
リルは恋人と喧嘩別れしたばかりで、ヴィックからダメ男操縦法を教わり、リルは彼に映画祭の内幕を暴露する。
映画上映が終わり、ヴィックへのインタビューが予定されていたが主役が現れず、酔って馬の遊具に乗っている彼をなだめて舞台に上げるが、散々映画祭の悪口を言って倒れてしまった。
ホテルに戻ってもヴィックの怒りは収まらず、撮影するカメラを取り上げて投げ捨て、スタッフを追い返してそのまま意識を失ってしまう。
翌朝、寝坊して遅れたリルが迎えに行くと、ヴィックは残りの日程をキャンセルして帰ると言う。仕方なく空港に向かうリルだったが、途中、ヴィックは故郷のノックスビルが近いことを知り、そこまで運転しろと命じた。
故郷に着いたヴィックは、育った家に行って母との思い出に浸り、アメフト時代のスタジアムなど思い出ツアーをして昔を懐かしんだ。
最初の妻で離婚したクラウディアとの思い出もこの地にあり、プロポーズのことなど思い出話をした後、彼女に会いたいと老人ホームを訪れるが、面会時間を過ぎていて叶わなかった。
ヴィックはその晩はリルと高級ホテルに泊まり、翌日二人でクラウディアの元を訪ねる。アルツハイマー病でヴィックを理解できないクラウディアだったが、彼は裏切りと傲慢さを詫びて、昔プロポーズをした思い出の場所に連れて行き、心を取り戻した彼女と改めて愛を確認する。
映画祭は最終日となり、ヴィック不在の中で功労賞の授賞式が行われるが、そこにヴィックが現れ、彼は参加者に丁寧に詫びた後、謙虚な受賞のスピーチを行い、拍手を浴びて会場を後にした。
ロサンゼルスに戻った彼の部屋には、功労賞のトロフィーが飾られている。

《感想》今は老いて寂しい身だが、かつて華やかな道を歩いた往年のスターが、自分の功績を称賛する映画オタクの若者らと触れ合って、過去の自分に向き合い、それまでの頑なさが徐々に消えて、自分の人生を素直に受け入れていく。
また、故郷の思い出をたどって、かつて愛した元妻に思いが及び、その再会が悔いばかりの自分の人生に光明を投げかけて、人生で真に大切なものは何か、気付かされる。
そして最愛の女性に償いをし、自分の人生に感謝するまでに……。
誰しも老いていくことは憂鬱で切なく、人生を振り返ると悔やまれる思い出ばかり心に残る。
だけど、人生の正解なんて初めから分からない。分からないから人生は面白い。
一人の映画人の人生を振り返りながら、「成功か失敗かだけでなく人生はいろいろで、それぞれ慈しむべきもの」そんな思いにたどり着く、しみじみとした映画だった。
バート・レイノルズは、自身をモデルにした本作で主人公を演じ遺作になった。頑固で偏屈な老人から、だんだん独特のユーモアと優しさが見えてくる、そんな彼の演技が味わい深い。
加えて、わがままな彼に辛抱強く付き合うパンク娘(アリエル・ウィンター)のはじけたキャラが素敵だった。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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