『ふたりの人魚』ロウ・イエ

混沌とした街の混沌とした愛

《公開年》2000《制作国》中国
《あらすじ》ビデオ撮影の仕事をする「僕」はある日、バーの大きな水槽で泳ぐ人魚の撮影を頼まれ、人魚に扮して泳ぐメイメイ(ジョウ・シュン)に一目惚れして付き合い始め、今は恋人になっている。
メイメイは聞く「私がいなくなったら、マーダーのように探す?」。
そのマーダー(ジア・ホンシャン)はバイクを使った運び屋で、金になるなら何だって運び、ある日、ムーダン(ジョウ・シュンの二役)という少女を運ぶ仕事が舞い込んだ。
ムーダンの父親は、密輸で大儲けして愛人を作り、愛人と密会する日に邪魔なムーダンを叔母の家まで届けるという仕事だった。定期的に依頼があり、次第にマーダーとムーダンは恋仲になる。
そんなある日、裏社会に生きるボスと情婦から、ムーダンを誘拐して父親から身代金を取る計画を持ち込まれ、渋っていたマーダーだったが、やむなくムーダンを誘拐・拉致する羽目になる。
ボスたちは身代金を受け取るが、その際情婦はボスに殺され、身代金の取引後、誘拐事件の成り行きを知ったムーダンは悲観して、マーダーを振り払って突然駆け出した。
後を追うマーダーだったが、橋にたどり着いたムーダンは蘇州河に飛び込んでしまい、すかさず彼も飛び込むが、ムーダンを見つけることは出来ず、その後も遺体は発見されないまま、彼は逮捕され刑務所行きになった。
数年して出所したマーダーは、再び運び屋となってムーダンを探し、ある日バーの水槽で、ムーダンにそっくりなメイメイに出会う。
マーダーは、メイメイがムーダンであると信じ切り、メイメイは彼が語るムーダンの存在を信用していない。
だが狂ったようにムーダンを探すマーダーの情熱に、メイメイもだんだん共感していって、恋人である「僕」との関係が崩れていく。
そしてある日、マーダーは、町外れのコンビニに勤めるムーダンに出会う。
突然の再会に驚くが二人はすぐに打ち解け、愛を確かめ合う。だが、酔ったあげくの事故で、翌朝二人は水死体で発見された。
遺体確認をした「僕」はメイメイそっくりの遺体に驚き、ムーダンの遺体を見たメイメイは泣き叫び、マーダーの“物語の中にしかないような話”が本当だったことに驚いた。
翌日「僕」がメイメイの住むハウスボートを訪ねると、彼女は不在で「愛しているなら探して」という書置きがあった。
探そうと思った「僕」だったが、「永遠のものなどない。次の物語を待つ」と思い直して、エンド。

《感想》人魚のメイメイはカメラマンの「僕」の恋人で、彼女に瓜二つの少女ムーダンを運び屋のマーダーは探し続けていた。
果たしてメイメイがムーダンなのか? それとも……。
メイメイをムーダンだと思い込むマーダーは、ムーダンへの愛と過去を何度も語り、その一途さにほだされたメイメイは「もしかしたらムーダンなのかも」と思い始め、惹かれていく。そして「僕」との関係が壊れていく。
“想像の世界”が現実に入り込んで、それによって現実が作り変えられ、どこまでが現実か、混沌としてくる。
それは姿を見せない語り手の「僕」によって、様々な憶測と深読みを誘う。
ラスト、「僕」はメイメイを探そうとはせず、「永遠のものなどない。次の物語を待つ」とつぶやく。すべて「僕」の創作した“物語”という気もする。
上海の街は、古びた建物が取り壊され、高層ビルが建ち並ぶが、蘇州河周辺にはまだ貧しい暮らしの家々が残り、川はどんより澱んでいる。
過去の愚かさを悔い探し続ける男の切なさ、その一途さに共感して移ろう女心、都市の変容と人の心の移ろいを重ねた寓話ではないか、と思える。
ジャージを着た少女ムーダンと、人魚姿の妖艶なメイメイを演じたジョウ・シュンが幻想世界の中で輝いている。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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