『トゥルー・グリット』ジョエル&イーサン・コーエン

荒くれ男と少女の愛と冒険譚

《公開年》2010《制作国》アメリカ
《あらすじ》1870年代のテキサス付近。14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、牧場主だった父を使用人のチェイニーに殺され、馬と金貨を奪われた。
父の仇を討つため彼女は、酒好きだが凄腕の保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)にお金を払い、彼を雇う。
そこに別件で懸賞金が掛かっているチェイニーを追って、テキサス・レンジャーのラ・ビーフ(マット・デイモン)が現れた。
コグバーンと約束した朝、マティが目覚めると彼は既に出発していて、後を追いかけるとコグバーンとラ・ビーフが一緒で、賞金山分けの協力関係ができていたが、マティが追い付いてまもなく、二人は喧嘩別れしてしまう。
チェイニーがお尋ね者ネッド一味に加わっていることを知ったマティとコグバーンは、一味の二人が隠れ住む山小屋で手がかりを得ようと襲うが、手違いで二人とも殺してしまう。
小屋の陰で一味が来るのを待ち伏せていると、現れたのはラ・ビーフで、その後からネッドたちが来るという想定外の展開になり、ネッドは逃がしてしまうが、ラ・ビーフと合流してネッドらのアジトを目指す。
ところが二人の銃にまつわる自慢話が衝突して再び喧嘩別れしてしまう。
コグバーンと旅をするマティはある朝、水汲みに行った川でチェイニーと鉢合わせし、チェイニーを撃ち重傷を負わすが、彼らに捕まってしまう。
マティを人質にとられたコグバーンは、ネッド一味4人を相手にした決闘で3人を倒し、ネッドに致命傷を負わせるが落馬してしまい、瀕死のネッドに殺されそうになる。
そこを救ったのがラ・ビーフのカービン銃による狙撃だった。
マティと一緒に残された重傷のチェイニーは、ラ・ビーフを不意に石で殴りかかるが、マティのカービン銃で射殺され、マティは銃を撃った勢いでガラガラ蛇の穴に落ちて蛇に噛まれてしまう。
マティを穴から救出したコグバーンは、馬を休めることなく走らせ、馬が死ぬとマティを抱えて一晩中走り続け、人里まで送り届けて命を救った。
それから25年後、毒の治療で片腕を失ったマティの元に、音信不通だったコグバーンから、ワイルド・ウェスト・ショーで働いている旨の便りが届き、そこを訪ねると3日前に亡くなっていた。
葬られていた共同墓地から遺体を引き取ったマティは、彼の墓を作って埋葬し、生きていれば老人であろうラ・ビーフにも会いたいものだと述懐してエンド。

《感想》父親を殺された少女が、二人の男に助けられ仇討を果たすという西部劇で、復讐もののストーリーに、少女目線で描いた冒険譚を加味している。
少女は正義と、それを守る法を信じて果敢に挑むが、この当時、この地が法の下に統制されていたとは思えず、無法地帯での少女の挑戦はいわゆる“時代劇”の枠を超えないにも関わらず、危うくてハラハラさせられる。
そして映画は、悪を懲らしめ復讐を果たすだけの単純な勧善懲悪の形では終わらない。
無謀な冒険の過程で、避けられなかったとはいえ、殺戮の罪を犯した少女も「罪の報いを受ける」ことになり、仇は撃ったものの片腕を失うという結末を迎える。
なかなかスカッとはさせてくれない。
だが、同監督の映画としては、毒は少なめで、むしろ隠れた心の交流が味わいになっている。
コグバーンは当初マティに対して冷たかったが、徐々に彼の持つ優しさがにじみ出て、命を救おうと抱きかかえて走るまでになり、娘を守ろうとする父性愛なのか、胸に迫るものがある。
それに対し、独身のまま25年が経ち、亡くなった男の遺体を引き取って墓を建てるマティには、単に命の恩人以上の想いが込められているようで切ない。
何と言ってもマティを演じるヘイリー・スタインフェルドが素晴らしい。
大人相手の交渉事に臨むその毅然とした表情は、背伸びした可愛さに溢れているし、巧みに馬を操り、馬で川を渡る姿はまさに“西部の少女”である。
乱暴に言うと、彼女の輝きが映画を支えている。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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