『アメリカン・アニマルズ』バート・レイトン

焦りと不安が犯罪に。痛い青春

《公開年》2018《制作国》アメリカ
《あらすじ》2004年のアメリカケンタッキー州、芸術家志望の大学生スペンサー(バリー・コーガン)は、大学生活に失望し、特別な何かが起きて欲しいと漠然と願っていた。
そんなある日、大学図書館内に1200万ドルの画集類が展示されていることを知り、友達のウォーレン(エヴァン・ピーターズ)に話すと、スポーツ奨学生として入学したものの嫌気が差していたウォーレンが乗り気になり、二人は本を盗むことにする。図書館の図面や警備状況を調べ、ウォーレンがアムステルダムに行って、買い取り先の交渉まで始める。
そして人手が足りないことに気付き、FBIを目指しているエリック(ジャレッド・アブラハムソン)と、運転手役にお金欲しさのチャズ(ブレイク・ジェンナー)を引き入れた。
4人組となって計画を進め、映画『レザボア・ドッグス』のように色で呼び合うコードネームを決め、リーダー格のウォーレンがそれぞれ指示を与える。
スペンサーは変装用の服を購入、エリックは逃走用の車を用意、チャズは逃走経路のチェック、最難題の司書グーチを気絶させる役はウォーレンが担うことになった。
そして決行の日。変装した4人は図書館に集まるが、展示室の前にはグーチ以外に数人の司書がいて、彼らは計画の中止を余儀なくされ、内心、犯罪計画にビビっていたスペンサーは秘かに安堵した。
後日、再実行することになった4人は、及び腰のスペンサーを見張り役に変え、まずウォーレンが図書館に入ってグーチに接触し、エリックを招き入れて、スタンガンを使ってグーチを縛り上げ、小さな本はリュックに、大きな画集も手に入れる。
ところが逃走経路が行き止まりで、非常階段を使うが本を落としてしまい、図書館の利用客に気付かれて、小さな本のみ持って逃げ出した。
一行は、盗んだ小さな本を売るためバイヤーの元を訪ねるが、翌日にならないと真偽の確認・証明が出来ないと断られ、スペンサーは連絡先を渡して引き揚げた。その連絡先が、スペンサーが普段使っている携帯電話番号だったため、チャズは怒り、皆が心配した。
後日、4人の身元は割れ、全員が捕まり懲役7年の実刑を受けた。
現在は服役を終え、ウォーレンは映画製作、スペンサーは芸術家、エリックは作家、チャズはジムのインストラクターとして活動している。
事件の当事者4人と被害者のグーチ本人がインタビューに答え、当時を振り返って、エンド。

《感想》大学には入ったものの、大学生活は期待とは大違いで、失望と共に漠とした将来への不安を抱いた若者が、何か「困難な出来事を経験」し、「一線を超えたい」、そうすれば「俺は変われる」と一念発起して、図書館から高価な本を盗みだす計画を立てる。
自分は特別な存在と信じたい思い、早く何者かにならなければという焦り、そんな若者の願いが大事件を引き起こし、稚拙で浅はかな行動は自滅へと向かう。そんな痛々しい青春を描いている。
行動自体は間違いであっても、芯にある思いは共感を誘うし、穴だらけのドジな計画は笑えて、全体に独特のユーモアが漂う。
さらに“真実の物語”として、事件の当事者本人を度々登場させ証言させるという表現手法から、フィクションとドキュメンタリーが絡み合ったような不思議な面白さが生まれて新鮮に思えた。
登場する4人とも特別な若者ではなくて、初回失敗の際は平和な日常に戻れて内心ホッとするという本音を見せ、スタンガンで他人に危害を加えることには躊躇する、そんなフツーの感覚を持ち合わせていて、『レザボア・ドッグス』を反面教師に、暴力の怖さや痛みを我が事のように描き好印象を残している。
そしてこの事件は若者にとって挫折だったが、当事者がその後、事件や服役という“大きな出来事”をバネにして、それぞれの場で堅実に活躍していることが何よりの救いである。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です