『THE GUILTY / ギルティ』グスタフ・モーラー

音の刺激と想像がドラマを作る

《公開年》2018《制作国》デンマーク
《あらすじ》緊急通報指令室のオペレーターをするアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)は警察官で、過去の事件から謹慎していて、明日の裁判如何で復職できるか否かという立場だった。
今日の勤務を終え夜勤と交代する直前に、怯えた声の女性から通報を受け、発信情報からイーベンという名だと分かる。会話がかみ合わず、近くに男の存在があって、誘拐事件の匂いがするので慎重に聞き出すと、子どもを自宅に残したまま白いワゴン車で連れ去られたことが分かり、そこで電話は切れた。
アスガーはすぐ指令室に連絡し、携帯エリアから割り出したおおよその地点で、白いワゴン車を探すよう依頼する。
そして事件の行方が気になるアスガーが、イーベンの自宅に電話をかけると、マチルデという6歳の少女が出て、パパがママを連れて出て行って、まだ赤ちゃんの弟オリバーが部屋にいると言う。アスガーは、パトカーをイーベン宅に向かわせた。
イーベン宅に着いた警察官からアスガーに連絡が入り、マチルデは保護したが、弟のオリバーは腹を裂かれて死亡しているとのことだった。
悩んだ末、アスガーはイーベンの前夫ミケルに電話し、携帯の位置情報からシェラン島だと把握し、ミケルを説得しようと試みるが、言い争いの末電話は切れた。
また、元相棒の刑事ルシードに連絡して、ミケルの家を捜索し、シェラン島に関する資料を探すよう頼んだ。
アスガーは、ワゴン車の荷室に閉じ込められているイーベンに連絡し、武器になるブロックがあることを確認すると、荷室の扉が開いたら攻撃するよう指示する。
しかし興奮するイーベンを落ち着かせようと話すうち、イーベンは、オリバーに憑いた蛇から助けるためにナイフで退治したと言う。オリバーを殺したのはミケルではなくイーベンで、彼女は精神を病んでいた。
電話口にまもなく、イーベンがミケルを攻撃する音が聞こえ、電話は切れた。
そして相棒のルシードから、イーベンがかつて入院していた精神病院がシェラン島にあることを告げられ、アスガーは状況を呑み込む。
精神的に追い詰められ我が子を殺したイーベンを、ミケルが病院に連れて行こうとしていたのだった。
ルシードからの電話にアスガーは、「明日の裁判で、俺のために嘘をつくな」と伝えた。
そしてイーベンから掛かってきた電話で、正気を取り戻した彼女が橋から身を投げようとしていることに気付き、アスガーは必死で説得にかかる。
アスガーはかつて19歳の若者を、殺害する必要性はなかったのに、正当防衛を装って殺したと告白し、「わざと殺した僕と、君は違う」と言った。
電話は切れ、無力感に襲われているアスガーの元に、イーベンが無事保護されたという知らせが入る。アスガーは胸をなでおろすと、静かに部屋を出た廊下で、どこかに電話をかけてエンド。

《感想》緊急通報を受けたアスガーは、通報者の不審な音声に誘拐事件を想像し、その想像は彼の偏見や先入観に左右されて、事件をあらぬ方向に導く。
音声の刺激や想像だけでドラマが展開し、観客は電話のやり取りだけを追って、事件の行方と彼が抱える秘密を推理していく。
そして、実は被害者と思われたイーベンが精神を病んでいたことが分かる。
正気を取り戻して子殺しの罪を悔いるイーベンに、自殺を思いとどまらせようとアスガーは自分の罪を告白し、そこで改めて罪の重さに気付いて、保身のための偽証は求めず贖罪を受け入れようと決める。
錯誤によって生まれた悲劇で終わらせることなく、自らを悔い改める贖罪のドラマにしたことが、サスペンスに深みを与えている。
音声だけで展開するワンシチュエーションのドラマで、その“想像させる力”と斬新さには驚かされるし、脚本と構成の力は見事である。
若手監督(88年生まれ)の長編デビュー作。限られた予算だからこそ、その制約をバネにして、若い才能が開花するのかも知れない。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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