自分を解放し強くなっていく女二人の逃避行
《公開年》1991《制作国》アメリカ
《あらすじ》ウェイトレスのルイーズ(スーザン・サランドン)と友人で主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)は二人で週末の旅行に出かけようとしていた。
テルマの夫ダリルは横暴で、自分は遊び歩いているのだが妻には厳しく、テルマは言い出せないまま出かけてしまう。護身用の銃をバッグに入れて。
二人が酒場に寄り飲んでいると、ハーランという男に声を掛けられる。踊っているうち気分が悪くなったテルマが外に出ると、ハーランの態度が一変しレイプされそうになる。
その場にルイーズが駆け付け、男に銃を突き付けて助けるが、再び罵り始めたハーランをルイーズは射殺してしまう。
二人は現場を離れて策を練るが、警察に行っても有利な状況ばかりではなく、モーテルで休みたいが金が足りず、ルイーズは男友達ジミー(マイケル・マドセン)に電報送金を依頼する。
公衆電話から戻るとヒッチハイカーの青年J・D(ブラッド・ピット)から乗せて欲しいと頼まれ、ルイーズは難色を示すが、青年に好感を持ったテルマの頼みで同乗させる。
その頃、ハル警部(ハーヴェイ・カイテル)は、現場の目撃情報から車の持主がルイーズであることを突き止め、テルマが同乗していることも判明する。
送金を頼んだルイーズがモーテルに出向くと、そこにジミー本人が来ていて、彼女に思いを寄せるジミーから結婚指輪を渡される。しかし、訳も話せず、うつむくだけのルイーズだった。
モーテルに入り、ルイーズがジミーの部屋に行っている間、一人になったテルマの部屋に、いったん別れたJ・Dが再訪し、二人は意気投合して体を重ねる。
そして翌朝、ジミーが去り、顔を合わせた二人は、ジミーから借りたお金をJ・Dが持って逃げたことに気付く。
責任を感じたテルマは一人、J・Dから聞いた強盗の手口を真似て実行に移し、金を手に入れた二人はメキシコに向かう。やがてJ・Dが警察に捕まり、メキシコ行きもバレてしまい、捜査の手も迫ってきた。
途中、スピード違反で警官に捕まりそうになり、逆にトランクに拉致したり、セクハラ運転手のトラックを爆破したり……。
しかし、殺人、強盗、警官暴行の容疑がかかった二人を、警察は総力を挙げて追跡し、二人はグランドキャニオンの深い崖に追い詰められてしまう。
今まで彼女たちを何とか救いたいと説得に努めてきたハル警部は、彼女たちの元に歩み寄るが、それを振り切って二人の車は谷に向かってジャンプし、エンド。
《感想》抑圧的な暴君亭主を持つテルマと旅に出た友人のルイーズだったが、出会ったレイプ男の暴言が許せず射殺してしまい、思わぬ災難に翻弄されながら、逃避行を繰り広げるロードムービー。
逃走劇が進むにつれ化粧も落ち、衣服は土埃にまみれワイルドになるが、二人の同士としての絆は深まり、表情は輝いていく。
「私のせい?」が口癖で自信の持てなかったテルマが、盗られた金を取り返す、それも盗った男のセリフを真似て、まさかの強盗とは!
今までの自分から解放されて強くなっていく二人の女性。そして最後の決断のとき、確かな友情で結ばれた二人は、お互いを称え合って自由へと飛び立つ。
ラストシーンは切ない。“爽快なバッドエンド”という気がする。
物語の中身は決して明るくないのだが、登場人物が皆カラッと明るく、テンポ良くスリリングに展開し、暗い印象は残らない。
ハル警部と共に、ルイーズの彼・ジミーが女性擁護派で登場するが、ジミーの見返りを求めない純愛に惹かれた。
ルイーズの逃走理由も知らされずに金を用意し、プロポーズしながら、言えない事情を察して離れていく。この男気が泣かせるし、堪えてるルイーズが切ない。
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