『あいときぼうのまち』菅乃 廣 2013

原発と震災で壊滅した街、その歴史を描き再生を願う

《あらすじ》三つの時代の物語が交互に並行して描かれる。
【1945年】戦時下において、愛子の父・英雄は学徒動員でウラン採掘をしていた。原子爆弾を作るためのウランだが、知らされないままに敗戦まで掘り続けた。戦争未亡人だった英雄の母は、派遣された軍人と不倫関係に陥り、その母は敗戦と共に自殺した。
【1966年】町は原発建設を巡って賛成派と反対派に分かれ揉めていた。ウラン採掘をしていた愛子(大池容子)の父はどうしても原発建設に賛成と言えず、孤立し酒に溺れ、妻も離れて自ら命を絶つ。
16歳の愛子と健次(伊藤大翔)は愛を育むが、原発で揺れ動く町で二人の間に距離が生まれ、別々の道を歩むことになる。
【2011~12年】幸せな家庭を作り還暦を迎えた愛子(夏樹陽子)は、かつての恋人・健次(勝野洋)をフェイスブックで知り再会する。
その密会を孫娘の怜(千葉美紅)が知り、尾行して二人の車の鍵を放り投げてしまうが、その時、大津波に襲われる。
津波で祖母を失った怜は、それが自分のせいだと思い込み、自らを傷つける。音楽の道を諦め、疎開先の東京で援助交際へと走る。そして義援金募金詐欺の若者と知り合い、交流が始まる。
怜は自らを赦すことができないでいたが、ある時自分のせいで死んだのではなく、祖母は他人を助けるために亡くなったことを知る。
救われた怜は、故郷の被災したガレキの町で、祖母の追悼のために大好きなホルンを吹き、エンド。

《感想》世間の評価が低く、観る機会が少ない作品だが、このまま忘れ去られていいのかという思いがある。
福島、原発、震災という重いテーマを背景に、人間のドラマがしっかりと描かれ、福島という土地が背負った宿命、因果を歴史的にあぶり出すような脚本は、大胆にしてよく練られていると思う。
確かに時系列が混乱しやすく、運命に翻弄された暗い内容だが、ドラマを作る意欲に満ちていて、意外なほど押しつけがましさが感じられない。
ただ演出の切れは見られず凡庸で、若手俳優の生硬な演技も気になった。
加えて、戦争未亡人と軍人の色恋、震災で負った傷から援助交際に走る女子高生のエピソードを、あれほど濃密に描く必要があったのか、疑問である。
“ドキュメンタリー性+エロス”を描いた若松孝二の影響(脚本は弟子の井上淳一)だと思うが、このキワドイ描写は物語の性格からすればやや違和感があり、消化不良のまま残った。
ドキュメンタリー性で評価すべきは「東電」を名指ししていること。そのせいか、広告業界の大資本を敵に回し、映画業界内でも煙たがられたようで、資金面、営業面で苦労したことが想像できる。
テレビ放映や劇場上映はあまり期待できないが、ネット配信のリストには載っているのでぜひ観ていただきたい。
タイトルは大島渚『愛と希望の街』に由来しているようだが、内容に共通するものはない。同作は、貧しさのために「鳩を売る(帰巣本能で戻る)」という詐欺を繰り返す少年の物語で、貧困層にとって「愛も希望もない街」を描いたものだった。
本作の願いは一つ、大震災を乗り越えて「愛と希望の街」を復興させたいという願いであり、祈りである。作り手の思いはヒシヒシと伝わってくるし、この思いは、映画の出来不出来とは別に大事に受け止めたい。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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