『ギルバート・グレイプ』ラッセ・ハルストレム

家族愛と縛られる痛みを青年の目で描く

《公開年》1993《制作国》アメリカ
《あらすじ》アイオワ州の寂れた町の食料品店で働くギルバート(ジョニー・デップ)は、知的障害の弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)と肥満症で歩行困難な母ボニーの面倒を見ながら、家事を担う姉エイミー、高校生の妹エレンと共に暮らしていた。
毎年トレーラーハウスが通り過ぎるのを見る兄弟だったが、そのうち1台がエンストで空き地に滞在していて、乗っていたのが祖母と旅をしているベッキー(ジュリエット・ルイス)だった。
ギルバートはお客である人妻のベティ(メアリー・スティーンバージェン)と不倫関係にあり、保険会社を経営する夫のカーヴァー氏の目を盗んで情事にふけっていた。
そんな折、車にいるはずのアーニーが近くのガス塔に登り、警察が駆け付ける騒ぎを起こし、それをベッキーが見ていた。
ギルバートが働く店をベッキーが訪れ、配達を頼まれたことから二人の距離が近づき、デートする仲になる。
ベッキーと夕焼けの空を見ていたギルバートは、アーニーをお風呂に入れるために帰宅して、一人で上がれるよう教えてから、ベッキーの元に戻るが、話し込んで深夜に帰宅すると、アーニーは湯船に浸かったまま震えていて、家族から非難を浴びた。
ベッキーの出現でベティが情緒不安定になり、まもなくカーヴァー氏がプールで溺死する事故が起こり、殺人ではないかと噂になる。
ある日ギルバートの目を盗んで、アーニーが再びガス塔に登り、許してもらえずに拘留される。それを知った母は、直談判するために、肥満体になって初めて外出し警察に出向くが、釈放されたアーニーと母を町の人は笑った。
自分が殺したと噂の立ったベティは、町を去るとギルバートに伝え、ベッキーには「彼を譲る」と言って去って行った。
トレーラーハウスの車が直り、ベッキーは翌日出発するという。
翌日はアーニーの18歳の誕生日パーティーがあり、入浴を嫌がるアーニーと衝突したギルバートは、アーニーを本気で殴って家を飛び出し、アーニーはベッキーの導きで池に入って身ぎれいにした。
それを陰で見ていたギルバートはベッキーに、父親の自殺の真相と、それ以来の母の過食を告白した。
ギルバートは家に戻って母と和解し、お別れを言いに来たベッキーを母に紹介した。その夜、母は2階のベッドで眠るように息を引き取った。
母の巨体と葬儀のことを憂えたギルバートは「笑い者にはさせない」と決心し、家に火を放った。
それから1年、姉や妹は自分の人生を歩き出し、ギルバートとアーニーは再び訪れたベッキーのトレーラーに乗り込んでエンド。

《感想》知的障害の弟と肥満症の母の面倒をみる青年、ギルバートは家長の役割を強いられ、家族愛に縛られて自由を失った閉塞感の中で生きていた。
やがて肥満症の母を弔うために家を焼く、それは家族を縛り付けていた「家」という呪縛からの解放をも意味していた。
ラスト、自由な旅人ベッキーの車に弟と共に乗り込むが、何処に行くかは分からない。
ただ、未来に少し希望の光が差してきて、前途は多難だけど前を向いて生きていこう、というメッセージが込められている。
物語は静かに淡々と展開していく。重くなり過ぎないよう配慮された演出と、それに応えた役者陣が静かなドラマを支えている。
知的障害を持ち純粋無垢に走り回るディカプリオ少年は迫真の演技だし、ジョニー・デップは、ナイーブで不器用な若者を自然に演じている。
家族の絆と愛憎、青春の痛みと希望が温かい眼差しで描かれている。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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