有名レストランの一夜の騒動をスタイリッシュに描く
《公開年》2000《制作国》アメリカ
《あらすじ》クリスマス目前のニューヨークの街中で、一人の老人が二人組のマフィアに射殺される。被害者のエンリコはイタリアンレストラン「ジジーノ」のオーナーであるルイス(ダニー・アイエロ)のビジネスパートナーだった。
ルイスはレストラン業の傍ら、賭けの胴元をやっていて、エンリコの殺害は地区のマフィア「ブラック&ブルー」がビジネスへの介入を狙ってのものと見られた。
ルイスは本業でも悩みを抱えている。それはシェフを務める息子ウード(エドアルド・バレリーニ)が、店の看板であった伝統的家庭料理をないがしろにして、洒落た創作料理に打ち込み、今や予約殺到の人気店になったものの、批評家受けする新メニュー開発に熱中していることである。
ウードは店の経営権を譲るよう父に申し入れているが、ルイスは断固拒否し続けていた。
そんなウードと対照的なのが副料理長のダンカン(カーク・アセヴェド)で、庶民的な料理を得意としてルイスの信頼を得ているが、ギャンブル依存症でマフィアに借金があった。
今日も、戦場のような忙しさの厨房をよそに、店内は多くの客で賑わっている。
レストランバーのカウンターでは、雑学好きのバーテンダーが客を相手に賭けクイズで盛り上げ、カウンターにはケンという金融マンが座り続けている。
画商は新進気鋭のアーティストたちを引き連れ横柄な態度で、画家志望のウェイトレスが描いた絵を酷評して、彼女と衝突してしまう。
料理批評家のジェニファーは変装して友人と来店し、彼女に取り入ろうと肉体関係まで持ったウードは、今夜も彼女のために奇想天外な料理を提供し、その評価を一層高めた。
ダンカンの賭けの胴元であるマフィアの二人組は、相棒を失ったルイスに、自分たちの事業拡大と、レストラン経営の相棒になりたいと申し出るが、ルイスは断っていた。
ニューヨーク市警の刑事ドルリーは、妻と共にルイスの計らいで招待され食事を楽しんでいる。
ルイスが秘かに思いを寄せるエンリコの娘ナタリーも、一人娘を連れて来店し、ルイスに父の死の真相を詰め寄るのだった。
そしてルイスは、ついにウードに店を譲る決意をして彼に伝え、ダンカンの借金をマフィアに支払って、ナタリーが待つ家へと向かった。
その後、事件が起こる。トイレでマフィアの二人がケンによって射殺されてしまう。すぐに殺し屋ケンはその場を去り、刑事ドルリーが現場を仕切る。全てルイスのシナリオ通りに事が運んだ。
ルイスが待つ車に現れたケンは謝礼を受け取り、騒動が収まった店は過去最大の来客数だったことが告げられエンド。
《感想》相棒を殺されたレストランオーナーの復讐譚が静かに潜行しているのだが、表面はこの店に群がる人々の欲望・野心がうごめく、一夜のスリリングな群像劇になっている。
マフィアには弱腰と見せながら秘かに復讐を狙うオーナー、批評家に取り入ってアート系の料理を目指す息子のシェフ、ギャンブルの借金をギャンブルで返そうと焦る副料理長、恐喝して店の乗っ取りを狙うマフィア。そして金融マンは女性と戯れながら仕事のチャンスを待っている。
それら様々な野心が詰まった人間ドラマが、同時進行で描かれる。
個々のエピソードの描き方は雑然としていて、掘り下げも浅いのだが、多彩なキャラ設定とテンポの良さで惹き込まれてしまう。
いかにも強面のマフィアが、殺しを裏稼業とする金融マンにあっさり殺されてしまうが、ニューヨークならありそうな話で、真に怖い裏方の存在を隠し味にして、後味良く締めるあたり、料理の妙味にも通じている。
料理+恋愛+サスペンスの内容に、多彩なキャラと洒落た会話という群像劇の面白さが溢れていて心地良く、オシャレな雰囲気が楽しめる。
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