『洲崎パラダイス 赤信号』川島雄三 1956

遊興の街に流れ着いた駆け落ち男女の機微を描く

《あらすじ》義治(三橋達也)は色街の女・蔦枝(新珠三千代)と深い仲になり、駆け落ちして勝鬨橋に着くが、行くあても金もなく、バスに乗って降りたのは洲崎弁天町で、蔦枝が先に立ち、義治が後を追う。
花街・洲崎パラダイス近くの飲み屋「千草」の女中募集の求人広告に惹かれ、そこで女将のお徳(轟夕起子)に仕事を頼み、蔦枝は接客手伝いの仕事を始め、無職の義治と二人、2階に寝泊まりさせてもらう。
最初に蔦枝の馴染み客となったのは神田で電気屋を営む落合(河津清三郎)で、羽振りが良く、二人は急接近する。
一方の義治は、お徳から紹介された近所の蕎麦屋の出前持ちをイヤイヤながら始めるが、覇気のない彼は失敗ばかりだった。
働き始めて数日、蔦枝が田舎に送金したいからと義治に給料前借を頼むが、義治の立場で頼めるはずもなく、蔦枝が落合に頼むと落合は快く融通してくれ、高価な和服も贈られ、探してくれたアパートに引っ越す頃には、すっかり愛人のようになっていた。
義治は蔦枝と落合の関係に苛立ち生活が荒れるが、そんな彼をかばい続けたのが女店員の玉子(芦川いずみ)で、いつしか可憐な玉子と義治の間にも心通うものが芽生える。
そんな折、色街の愛人と出奔したお徳の亭主が一人で帰ってきて、何事もなかったかのようにお徳に迎えられ、亭主は家族との平和な日々を取り戻す。
ある日、蔦枝と落合の仲が発展していることを知った義治は憤慨して家を飛び出して行く。アパートを探すが見つからず、神田の電気屋を尋ねるが行き当らず、行き倒れて道路工事の土工に助けられる。
落合を探し疲れた義治が戻ると、玉子の義治への好意に気付いていたお徳から、堅気の玉子と一緒になれと水を向けられ、満更でもない義治だった。
だが、そろそろ落合にも飽きた蔦枝が義治に会おうと現れ、玉子のお陰で堅気にと考えていた義治はまた心迷う。
そして事件が起こる。お徳の亭主が別れた愛人に刺殺されてしまったのだ。
偶然その場に居合わせた義治と蔦枝は見つめ合う。このまま縁が切れないことを察してヨリを戻した二人は、数日後この地を逃げ出し、再び勝鬨橋に佇む。
今度は義治が先に立ち、後に付く蔦枝と共に、やり直そうとバスに乗ってエンド。

《感想》頼りないダメ男と強く生きる尻軽女が主人公。
蔦枝は貧乏くじのような義治に愛想を尽かし金持ちに走るが、頼りない義治のことがやはり気になる。
義治は気の乗らない仕事の日々にあって、彼を優しく包む玉子の好意にほだされ傾きかけるが、愛憎の末の刺殺事件に出会い、腐れ縁の宿命を感じる。
情愛と欲望で結ばれ、背信と嫉妬で心離れ、それでも離れ難い男女の機微のような感情と関係が描かれる。
ラスト、義治に去られションボリ洲崎橋に立つ優しい玉子も、蔦枝を世話した電気屋の主人も可哀想だが仕方ない。あまりに身勝手な二人だが、どこか憎めず、微笑ましくもある。
橋を渡れば花街という欲望が見え隠れする雑然とした街。遊郭に売られた女の子に恋して通い詰める純情青年のエピソードなど、市井の悲喜こもごもと葛藤が描かれ、哀愁とか寂寥感が漂うのだが、どこか明るく感じられるのは、作り手の視線の温かさかと思う。
江東区東陽町あたり、勝鬨橋、都電、秋葉原電器街など、背景となる戦後10年を経た東京の風景には、復興への息吹と時代の匂いが感じられる。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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