『GO』行定 勲 2001

苦悩し疾走する在日若者のほろ苦い青春

《あらすじ》在日韓国人の杉原(窪塚洋介)は日本の普通高校に通っている。両親(山崎努、大竹しのぶ)が朝鮮籍だったため、中学までは朝鮮学校に通っていたが、両親が突然ハワイに行きたいからと韓国籍に変えたため、それを機に韓国籍とし、日本の高校に進学した。
高校生となった杉原は在日韓国人というレッテルを貼られ、不良たちから“挑戦者”として喧嘩を売られるが、元プロボクサーだった父の教えが功を奏して、それらを跳ねのけていた。
挑戦者第一号だったヤクザの息子の加藤とは、喧嘩が縁となって仲良くなり、ある日加藤の誕生日パーティに招待されて、そこで桜井(柴咲コウ)という女子と知り合う。
互いに惹かれるものがあり、二人はパーティを抜け出して、夜の小学校校庭で話し込み、それから二人の交際が始まる。
デートを重ね、杉原は桜井の家に招かれるまでになり、桜井の家族に気に入られた杉原は、それ以降桜井の家に通うようになった。
そんな時、杉原の朝鮮学校時代からの友人・正一(ジョンイル)が、日本人高校生に刺され亡くなるという事件が起きる。
正一は杉原とは真逆の優等生だが、朝鮮学校の民族教育に染まり切れない杉原に味方し、教師に「僕たちは国なんか持ったことありません」と反発し、それ以来の親友だった。
事件は在日朝鮮人の女子高校生を巡る些細な誤解から起きていたが、朝鮮学校時代の仲間が敵討ちを企てる中、杉原は「あいつはそんなことを望んでいない」と拒否する。
親友を失って落ち込む杉原を慰めようと、桜井は朝まで一緒にと言い、二人してホテルに入り、そこで初めて杉原は自分が在日韓国人であることを告げる。
ところが突然、桜井は拒絶反応を示し、両親から「血が汚い」と教えられ育ったことを話す。そしてそのまま別れてしまう二人だった。
ある日、杉原は酔っぱらった父親を迎えに行った。朝鮮にいる父の弟が亡くなったという。杉原の家族が韓国籍に変えたため、父は弟に会えなくなっていた。
杉原は国籍で色分けされる世の中に苛立ちを覚え、父親に喧嘩を売りボコボコにされる中で、父が国籍を変えたのは息子の足かせを少しでも取り除きたい親心と悟る。
しばらくして桜井から杉原に呼び出しの電話が入る。小学校の校庭で桜井は、実はパーティ以前から杉原を知っていて、バスケの試合で暴れ連れ出される杉原の目が忘れられなかったと話す。
桜井なりに勉強し考えた挙句の結論は「杉原の国籍がどこであろうと関係ない」。二人抱き合い涙してエンド。

《感想》朝鮮籍だった両親は、子の足かせを軽くしようと韓国籍を取るが、そのため朝鮮籍の弟の死に目に会えず、親から「広い世界を見ろ。そして自分で決めろ」と言われた子は韓国籍を選ぶが、日本人との確執は絶えず、恋人とも危機を迎えてしまう。
そして叫ぶ「俺は何人だ。俺は何者だ」。
親世代は在日の苦労を知っているから、子の国籍を画策し、子は「自分とは?」と悩む。全ては差別に根ざしている。
それは意識の底に沈み根深く、容易に消し去ることができないものだからこそ、きちんと掘り起こして、見つめ直さなければならない。
その意味で、ラストの和解シーンには今一つ不満が残る。
桜井の逡巡する思いや、気持ちを整理するまでの葛藤が見えない。ハッピーエンドを急ぎすぎた感がある。
とはいえ、重苦しいテーマに、軽妙な味わいを無理なく加味しているところは、クドカン脚本と、山崎、大竹を始めとする手堅い脇役の成果と思える。
そして窪塚の暴走ぶりと疾走感はハマりきっていて圧巻。
2005年の井筒和幸『パッチギ!』と並ぶ“在日青春もの”の傑作である。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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