『スナッチ』ガイ・リッチー

洒落たセンスとブラック・ユーモアで魅せるクライム群像劇

スナッチ

《公開年》2000《制作国》イギリス、アメリカ
《あらすじ》主な登場人物は次の四組で、ダイヤモンドの行方と、裏ボクシングのトラブルを軸に展開する。
A)ニューヨークマフィアのボスである不死身のアビーと、その手下でダイヤモンド強盗団のフランキー(ベニチオ・デル・トロ)とトニー。
B)ダイヤを狙うロシア人の武器商人ボリスと、その手下のソルとヴィニーのコンビに、逃がし屋を加えた黒人トリオ。
C)裏ボクシングのプロモーターのターキッシュ(ジェイソン・ステイサム)と相棒のトミー(スティーヴン・グレアム)。その八百長試合に絡むのが素手ボクサーのミッキー(ブラッド・ピット)。
D)地元ギャングのボスで冷血漢のブリックトップ(アラン・フォード)は裏ボクシングの元締めでもある。
まずフランキー率いる強盗団がアントワープでダイヤモンド強奪に成功し、小粒の盗品のさばきと銃の仕入れでロンドンに立ち寄り、ギャンブル好きのフランキーは、武器商人ボリスの誘いに乗って裏ボクシングの賭けに手を出す。
その裏では、ターキッシュがギャングのボス・ブリックトップを利用して八百長試合を仕掛けようとしていた。
また、ターキッシュはトレーラー購入でパイキー(流浪民)の下を訪れトラブルの末、仲間のボクサーを潰したミッキーという才能ある男に出会う。
一方、ボリスは手下を使ってフランキーが持つダイヤ入りケースを狙うが、襲ったもののフランキーとケースは手錠でくくられていて、手下はフランキーごとボリスの元に連れ帰る。
そして裏ボクシングの試合が行われ、負けろと言われていたミッキーが勝ってしまい、賭けに負けたブリックトップは怒り狂う。
フランキー捜しのためロンドンに来たボスのアビーは、フランキーとダイヤの行方を握っているのがボリスであることを突き止め、両者の対立は一層深まり、裏ボクシングの連中も絡んだ騒動が巻き起こる。
その騒動でボリスはトニーに撃たれ、そのトニーもアビーに撃たれ、ブリックトップもミッキーの罠であっけなく殺されてしまう。その最中に肝心のダイヤはミッキーの飼い犬に食べられてしまった。
ボクサーのミッキーは再び八百長試合を指示されるが、またもや勝利してしまう。ところが今度はミッキー自身が秘かに自分に賭けていて、大金を手に入れた彼は、そのまま姿をくらます。
ボリスの手下たちは逮捕され、ターキッシュとトミーは姿を消したミッキーの犬を飼い始め、犬の体内からダイヤを取り出すことに成功してエンド。



《感想》強盗団が手に入れたダイヤを巡る奪い合いと、賭けボクシングを巡る騙し合いが絡みながら、10人以上の登場人物が入り乱れ展開する群像劇で、各々の人物像や関係性が理解できるまで多少分かりにくい。
だが、悪党ながら憎めない強烈キャラが次々登場し、テンポのいい展開の中でブラックなジョークが行き交う、そのセンスの良さ、可笑しさとカッコ良さ、軽めのノリに惹き込まれる。突っ込む前に思わずニヤリとしてしまう。
そして、ダイヤとボクシングを巡るそれぞれの事件が同時進行的に勃発して、混乱のピークで全体が交錯して収束を迎えるという、その構成の巧みさには感心した。
また、二度観しないと分からないくらい複雑でスピーディな展開に、それに追い付こうと目を凝らしながら、一方でドタバタを眺める楽しさもあって、そのドキドキ感が魅力になっている。
スタイリッシュな映像と秀逸な会話……作風がタランティーノに似ているところから引き合いに出されるが、もっと軽めで、気楽に観られる。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があり、そこに喜びがあります。鑑賞はWOWOWとU-NEXTが中心です。高齢者よ来たれ、映画の世界へ!