『最高の人生の見つけ方』ロブ・ライナー

病気や死に前向きに。老人のための寓話

最高の人生の見つけ方

《公開年》2007《制作国》アメリカ
《あらすじ》勤勉実直な自動車修理工・カーター(モーガン・フリーマン)はがんの宣告を受け治療のために入院するが、同じ病室に喚き散らす患者エドワード(ジャック・ニコルソン)がやってくる。
彼は大富豪でこの病院の経営者でもあったが、1部屋2人という徹底した合理化策をとっていたため、それに逆らえず、身の周りを秘書のトーマス(ショーン・ヘイズ)がみていた。
当初は毛嫌いしていたエドワードだったが次第に打ち解け、身の上話もするようになる。しかし二人とも余命6か月と告げられていた。
ある日、カーターが書き留めていたメモ「棺桶リスト」をエドワードが見つける。そこには、死ぬまでにやりたいことがリストアップされていた。
見ず知らずの人に親切にする、死ぬほど笑う、など。そこにエドワードは、スカイダイビング、世界一の美女にキスをする、などを書き足し、二人はそれを実現する旅に出る。
まずスカイダイビングに挑戦、マスタングGTに乗ってレース、移動はプライベート・ジェットという豪華な旅が始まる。
ある時、4回結婚したが子どもはいないと言っていたエドワードの口から「実は音信不通の娘(名はエミリー)がいる」ことを打ち明けられ、カーターはリストに「娘と再会を果たす」を追加するが、エドワードからは拒否されてしまう。
エベレスト登頂は吹雪で諦め、香港のバーではカーターが女性に誘われるが、裏でエドワードが工作したものと知り、怒って帰宅の途に着く。
ところが帰る途中、カーターの発案で車はエミリー宅に向かい、これに怒ったエドワードは秘書と二人を残して一人家に帰ってしまう。
カーターは家族が待つ賑やかな家に帰り、妻との親密なひとときを過ごすが、その夜痙攣を起こして再び病院へ。
病室で再会した二人はその仲を取り戻すが、がんが脳に転移していたカーターは帰らぬ人となる。
カーターが残した手紙でその気持ちを知ったエドワードは、娘と孫娘に対面し、カーターの葬儀では弔辞を読み、残されたリストを次々クリアしていく。
やがてエドワードも亡くなり、トーマスは二人の遺灰を安いコーヒー缶に入れ、エベレストの頂上に安置してエンド。



《感想》死を前にした老人が、生きているうちにやりたい事をリストアップして、いかに悔いない人生の最期を迎えるか、一つずつ夢を叶えていく友情と終活の物語。
死は誰も避けられないし、しかも人生で何が幸せかは人それぞれ。お金、家族、自由……何が幸せをもたらしてくれるかではなく、何に幸せを見い出していくかが大切、二人の“やり残した”リストはそんなことを教えてくれる。
出来なかった大きな夢には無邪気に遊び、ささやかな“思い残し”には真摯に取り組もうとして、微笑ましくさえある。
余命短い病人が急に世界旅行に飛び出したりする、涙あり笑いありの現実離れした世界は、あくまで寓話とかファンタジーに近いものと理解した。
末期がん二人の最期となれば深刻になりそうなものだが、宗教、哲学など精神的なものには深入りせず、またそれにはすがらず、“お金(経済力)”で掴もうとするところが、いかにもアメリカ的と思える。
そして最後に“家族”に行きつくところも王道だが、名優二人の世界に惹きこまれ、そこは感動というよりしみじみ感に溢れていた。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。