『ジョイ・ラック・クラブ』ウェイン・ワン

米国に移住した中国人母娘の心の葛藤と再生を描く

《公開年》1993《制作国》アメリカ、中国
《あらすじ》1987年のアメリカ・サンフランシスコ。中国からの移民としてこの町に来た初老の4人の女性は、それぞれの年頃の娘4人と共に、ジョイ・ラック・クラブという名の集まりで、麻雀やおしゃべりの交流を持っていた。
ただ母親の一人、スーユアンが2か月前に亡くなったため、代わって娘ジューン(ミンナ・ウェン)が加わり、母の友人たちと交流している。
ある日ジューンは、スーユアンが中国に残して来た双子の姉がいることを知らされる。スーユアンは日中戦争の混乱の最中、まだ幼い双子を中国に置き去りにしていた。
スーユアンと同様、三人の母親も中国で過酷な体験をし、アメリカ育ちの娘たちとの間に何らかの確執を抱えていた。
1)母親リンドは16歳のとき、年下の裕福な家庭の御曹司と結婚させられ、愛情も関心もない夫に嫌気がさし、何とか離婚にこぎつけ渡米した。
再婚して娘ウェバリー(タムリン・トミタ)に恵まれ、彼女はチェスの才能を発揮するが、母親の過剰な期待から確執が生まれ、それと共にチェスの才能も消えてしまった。
時が経ちウェバリーの二度目の結婚相手は白人男性で、中国文化を理解していない彼と母親の間に溝ができ、ウェバリーと母も仲違いしてしまう。
年若いリンドを嫁がせるとき祖母が願っていた娘の幸せ、その話をリンドから聞いたウェバリーは、娘を嫁がせる母の複雑な心境(幸せを願うが故の過剰な干渉)に気付き和解するのだった。
2)母親インインは中国にいた頃、上流家庭の青年と結婚するが、浮気と暴力にあってインインは精神的に追い詰められ、夫への憎しみからまだ幼い我が子を死に追いやった悲劇的な過去を持っていた。
アメリカに渡り再婚して生まれた娘リーナ(ローレン・トム)はやがて中国人実業家と結婚するが、夫婦の生活費は折半と夫は口うるさく、窮屈な生活を強いられている。
そんな姿に昔の夫の暴力を思い出したインインは、娘に尊厳を取り戻すべきと助言し、その言葉を受けて離婚したリーナは、その後思いやりのある男性と再婚した。
3)アンメイは幼い頃に父親を亡くし、母は資産家の第四夫人になって、後に母の元に引き取られるが、その先で母と共に壮絶な体験をする。
かつて母は資産家の男に夫の死後、目を付けられて暴力的に妊娠させられ、生まれた男児は第二夫人に取り上げられ、屈辱の果てに自ら命を絶っていた。
アンメイは悲しみに暮れながらも、強く生きよ、という母の思いに応えようと、成長して渡米し、ローズ(ロザリンド・チャオ)という娘を生んだ。
大人になったローズは、大学在学中に知り合った白人青年と卒業後に結婚して主婦になるが、献身こそが愛と考える妻と、自由に意見を述べる女性を愛した夫との間に溝が出来てしまう。
離婚の話し合いが進む中、アンメイはローズに母の話をする。母のように自分を安売りして身を滅ぼしてはいけないと。
アンメイの言葉はローズに、女性が自立して生きる大切さを教え、ローズは夫婦関係をやり直すことになって離婚を回避した。
4)パーティが終わりに近づき、ジューンは母との確執や愛情に包まれた思い出に浸るが、父から更なる壮絶な過去を聞く。
戦時中逃げる際、双子の子どもを捨てたのは自らが赤痢にかかっていたからで、母親の死体が側にあれば誰も引き取らないと考えて、子どもと別れたが、気がつけば病院で命をつないでいたという。そして再会は叶わないまま世を去っていた。
ジューンはスピーチで、双子の姉を探し出したことに感謝の気持ちを述べ、中国に向かう。港に到着すると、母の面影を残した姉二人が出迎え、抱き合ってエンド。

《感想》日中戦争の混乱を生き延びてアメリカに渡り、幸せな家庭を築いた中国人の母親には、過酷な体験を経ているだけに生きていく強さがあり、その芯の強さや理想が時として娘への押し付けになってしまう。
アメリカの価値観の中で育った娘たちは、何より自由を尊び、押し付けを嫌い、そこで母娘関係はぎくしゃくしてくる。
しかし、娘に強く当たる母の心根には、娘への深い愛情があり、大人になった今そのことに気付いた娘は、母の思いが背中を押す言葉に変わり、自尊の思いや女性の自立、それらを胸に自分の人生を見直していくという物語。
混乱しそうな三世代、四家族の群像劇だが、過去のエピソードの挿入が自然で、それぞれのドラマがクッキリと浮かび上がる展開だった。
ハリウッド映画なのだが、描かれるのは中国社会で、香港出身の監督らしくアジア人の感性で描かれ、次作の渋い人間ドラマ『スモーク』とはまた違った女性目線で描かれた映画だった。
それぞれのドラマが奥深く、かつ密度が濃く、観る側には消化し切れないところもあるが、親の世代に思いを馳せるのも意味あるものと思わせる名作。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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