『ルージュの手紙』マルタン・プロヴォ

愛憎絡む真逆な生き方の二人が、互いに思いやり寄り添う

《公開年》2017《制作国》フランス
《あらすじ》大学生の息子と暮らすクレール(カトリーヌ・フロ)は、ベテラン助産師として働いてきたが、その病院の閉鎖が決まっていた。
ある日突然、30年来音信の無かった義母のベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)から連絡を受ける。
複雑な思いを抱いてクレールはベアトリスに会うが、彼女自身が深刻な脳腫瘍を患いながら、酒、タバコ、ギャンブルを楽しむ無茶な暮らしをしていた。
そんなベアトリスも、30年前にベアトリスが家を出た後、父アントワーヌが精神不安定になり自殺したことを聞くと、ショックを受け涙した。
元夫の死を長年知らずにいたことに呆れるクレールだったが、父がベアトリスに贈ったエメラルドの指輪を渡され、渋々受け取って帰る。
クレールは助産師として働く傍ら、ライン川に面した菜園に足繁く通い、隣の菜園の所有者でトラック運転手のポール(オリヴィエ・グルメ)との付き合いが始まる。
息子シモンには恋人リュシーがいて、彼女が妊娠していること、外科医を目指していたシモンが進級出来ず助産師を目指したいと告げたこと、ベアトリスが難手術を前にして情緒不安定になっていることなど、クレールを悩ます事柄が山積していた。
そんなクレールを励ましたのがポールで、ピクニックに誘い、優しく接してくれるポールにクレールも心惹かれていった。
一方、わがまま放題のべアトリスに対しても、その療養生活に付き添って身の回りの世話を始め、疲れながらも心を通わせるようになった。
ポールとの仲も男女の関係になり、住む家を失ったベアトリスを自宅に引き取ることになったクレールだったが、病院での仕事中はポールに付き添いを頼み、三人の良好な関係が築かれていった。
ところがベアトリスの症状が悪化して、医療費の支払いに追われる中で精神不安定になった彼女に、クレールは以前に貰った父親形見の指輪を返した。
そしてクレールは、気分転換にベアトリスを菜園に誘い、ポールと共に三人してトラックのドライブという楽しい時間を過ごす。
その夜、クレールが真夜中に目覚めるとベアトリスの姿が消えていた。簡単な別れの挨拶を残して。
それから数日後、ベアトリスからの郵便物が届く。その中には、あの指輪とルージュのキスマークが付いた紙が入っていて、クレールは共に暮らした時間に感慨深い気持ちを抱いていた。
その時、川辺で半分沈みかけていた一隻のボートが、川の流れにゆっくり流されていってエンド。

《感想》生真面目な助産師クレールが、間近に死を控えた義母ベアトリスを迎え、長らく疎遠だった上に自由奔放な性格の義母に振り回されるが、その自由な振る舞いに惹かれるものもあり、理解を示すようになる。
その義母と同様に自由人のトラック運転手ポールとの交際も始まり、クレールの心に変化が訪れる。
自由人ベアトリスの登場は、堅物女クレールの閉ざされた心を揺り動かし、それまでポールに対し頑なで禁欲的だったクレールが、自らの気持ちを解放して求めていく積極的な女性に変化していく。
一方、自由気ままに生きてきたベアトリスは、病気によって自由を奪われ、医療費にも困ってクレールに頼るしかない自分に憤り、絶望の真っただ中にいたが、クレールとポールの励ましで、病気を忘れ自由に浸れる一時を与えられ、最後の決断をすることになる。
元夫によく似た孫がセーヌ川で泳ぐ姿を見て「私が死んだらセーヌ川に流して欲しい」と言っていたが、その希望を他人に託すことなく、自ら死地に赴いたのではないか。それは沈みかけ流されていく小舟のようである。
末路は定かでないが、人に頼らず自由に生きた自分を貫き通す選択であり、自分の人生を肯定するという意味で、やはり人生讃歌と受け止めた。
クレールに宛てた別れの手紙に「あなたも私もそう悪い人生じゃない」とあるが、それが彼女なりの身の処し方なのだろうし、切なさと共に潔さが胸に迫る。重いのだが余韻はいい。
わがままで身勝手だが憎めない女をドヌーブが、堅物女が呪縛から解放されていく様をフロが演じているが、二人のカトリーヌがともに素晴らしい。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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