『エイプリルフールズ』石川淳一 2015

嘘で固めた物語に、秘めた優しさを見る

《あらすじ》
1)妊婦の嘘:対人恐怖症の清掃員あゆみ(戸田恵梨香)は、医者を装いナンパするセックス依存症の男・亘(松坂桃李)と一度関係を持ったことから妊娠し、連絡するも冷たくされ、レストランでCAを装うホステス麗子(菜々緒)と食事中の亘を、銃を持って迫り籠城する。
止めに入った紳士を装う指名手配犯(大和田伸也)が怪我をしたり、亘と麗子が揉めたりしたが、あゆみの陣痛がきて亘の指示と客の協力で無事に出産した。よりを戻す二人だった。
2)ロイヤル夫婦の嘘:高貴な身分を装う櫻小路(里見浩太朗)と妻・文子(富司純子)は、運転手(滝藤賢一)付きの高級車でブティックや食事と豪遊しているが、実は妻が余命宣告を受け、思い出作りをしている老夫婦だった。
そして船上コンサート会場に行き、急遽二人は舞台で歌うことになる。妻に嘘をついて始めた思い出作りだったが、妻は真実を知っていて、妻は夫の嘘に感謝し、二人して抱き合った。
実は、コンサート会場に着いたとき、運転手の元には「娘が誘拐された」という連絡が入っていた。
3)誘拐犯の嘘:裏社会で生きる宇田川(寺島進)は、小学生・理香(浜辺美波)を無理矢理車に乗せて誘拐し連れ回すが、理香から「自分は本当の子ではないから身代金は払わない」と言われる。連れ子ゆえ親に見放されていると思い込んでいる娘には万引き癖があり、ひねくれていた。
そんな娘を脅しつつも更生させようとする宇田川は、実は娘の実父だった。
娘を自宅前まで送り届けたところへ、連絡を受けた養父の運転手が駆け付け娘を必死にかばうのだが、そこで犯人が実の父だということを知り、不器用ながら愛情を注いでくれている実父、自分を思ってくれている養父の気持ちを知り、娘は改心する。
加えて、宇田川はヤクザの仁義から、会えなくなる娘に会いに来たのだが、思わぬ大失策から、カタギになることを決意する。
それ以外に、いじめを受け自分がスペースノイドと信じ宇宙船を呼ぶ中学生、突然ゲイに目覚める大学生、詐欺で捕まる占いの老婆など怪しげな面々が登場し、奇妙なエピソードが展開する。最後は、宇宙船を諦め現実に立ち向かおうとする中学生の元に、宇宙船が現れてエンド。

《感想》複数のエピソードが絡み合って、最後に一つの像を作り上げるのが“群像劇”だが、これだけ沢山盛り込むともはや収拾困難で、エピソードの集積で終わりそうなもの。しかし、詰め込み過ぎている割には、消化不良になっていない。この脚本(古沢良太)は力作である。
無茶苦茶と思える展開だが、大きく広げた伏線もほぼ回収され、エピソードも各々それなりにまとまっている。
“誘拐犯の嘘”が最もいい。妻の連れ子が誘拐されるが、子を思うヤクザの実父が犯人だったというオチが泣かせる。ヤクザの寺島進の怪演が光る。
突っ込み所は多々あるものの、それを超えるヒューマン・コメディの温かさで許せる。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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