『おみおくりの作法』ウベルト・パゾリーニ

孤独死を弔う男が、死者の“生きていた証”を探して

《公開年》2013《制作国》イギリス、イタリア
《あらすじ》ジョン・メイ(エディ・マーサン)はロンドン・ケニントン地区の民生係をする公務員で44歳、独身、親族も友人もいない。
度を越した几帳面な性格で、日常生活だけでなく、孤独死した人の葬儀を行うという仕事にもそれは徹底している。
単に事務処理をするだけでなく、遺品から身寄りを探し、葬儀には故人が好きだった曲を流し、引き取り手の無い遺骨は散骨をする、毎日死者のために丁寧な“おみおくり”の仕事をしていた。
ある日、メイの向かいのアパートの住人が孤独死し、それが最後の仕事になる。メイの仕事ぶりを無駄が多いと判断した上司から、解雇を言い渡されたためである。
死者ビリー・ストークにはアルバムが残されていて、若い頃に働いていたパン工場の同僚を訪ね、当時付き合っていた女性メアリーを探し出して話を聞くが、アルバムにあった少女には出会えなかった。
短気なビリーは、事件を起こして服役していたことがあり、内務省で当時の家族を割り出して、30歳近くになった“アルバムの少女”ケリー(ジョアンヌ・フロガット)に出会う。
ケリーは、音信不通の父を責め怒っていたが、嫌ってはいなかった。メイが父親のアルバムを渡すと、嬉しそうに受け取ったが葬儀への参列は拒否した。
更に調査を続け、軍隊当時の友人を訪ねた際、戦争のトラウマから普通の暮らしが出来なくなり、路上生活をしていた過去があることを知り、その当時の仲間に葬儀のことを伝えた。
調査を終了したところに、ケリーから葬儀に参列する旨の連絡が入る。再会したメイとケリーは、互いに惹かれ合うものを感じていて、ケリーから葬儀の後に話がしたいという申し出を受け、メイは少しワクワクした気分になる。
しかし、ケリーへのプレゼントを買って車道に出た途端、メイはバスに轢かれて死んでしまう。
ビリーの葬儀にはメイが声を掛けた多くの人が集まり、その横でひっそりとメイの葬儀が行われた。
ケリーもメイの葬儀と気付かなかったが、メイが丁寧に扱った多くの死者の霊が集まり、メイの墓を取り囲んだ。

《感想》暗く重いテーマだが、淡々と描く中で、クスっと笑えるシーンや穏やかな空気が流れていて温かく、それが救いになっている。
孤独死した人に対して、その人が歩んできた人生の意味、存在した証を探すことで死者を弔いたいという誠実な思いだけで仕事をするメイだった。
それは独身、親族・友人無しという自分を考えたとき、“明日の我が身”であり、だから死者の人生に思いを馳せ調べることは、自分自身の“生きている証”を手に入れるための作業でもあった。
調査対象だったビリーの人生はミステリーのように徐々に明かされていき、その結果、多くの生者に見送られ旅立つ。
一方、メイの葬儀には誰も出席せず、それをケリーも知らず、死者の霊だけが見送るというのは寂し過ぎるエンディングのようにも見えるが、それは生者の見方であって、今まで関わってきた死者から感謝され迎えられる死もまたあり、というメッセージなのだろう。
終盤、メイがバスに轢かれて、瀕死のメイの表情に笑みが浮かぶシーンが印象に残るが、彼にとっては、死後の世界や霊の存在が信じられ、現世の善行が来世の幸福をもたらすというような宗教観を強く信じていたと思える。だから半分くらいはハッピーエンドなのかも知れない。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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