『アメリカの友人』ヴィム・ヴェンダース

余命短い職人が挑む殺しに、加勢する詐欺師の友情
アメリカの友人
《公開年》1977《制作国》西ドイツ、フランス
《あらすじ》ドイツ・ハンブルグに住むアメリカ人トム・リプレー(デニス・ホッパー)がニューヨークの老画家を訪れる。
画家は数年前に亡くなったはずのデルワット本人だが、今はボガッシュと名乗り、本人の“晩年”の絵を描き続け、トムはそれをヨーロッパの画商の競売で売りさばいている。
稀少性から高値が付く訳だが、競売で居合わせた額縁職人ヨナタン(ブルーノ・ガンツ)は、青が違うから贋作とその違いを見抜く。
トムは美術商から、ヨナタンが白血病で金が必要であることを聞き、そのことがトムの昔馴染みでフランス・マフィアのミノの耳に入る。
ミノは敵対するマフィアを始末するのに、足のつかない素人を探していて、ここから、ヨナタンが抱える病状不安を煽り、素人殺し屋を作り上げていく動きが始まる。
遠く離れた友人から「病状を心配している」という便りが届くが、主治医は否定し、それでも不安が収まらないヨナタンは再検査を依頼する。
折しもトムはヨナタンの店を訪れ、額縁を注文して接触を始め、次にミノが「殺しの報酬で大金が入る」話をする。
そして、パリの血液学の権威の診察を受けるように誘う。その誘いに応じたヨナタンは、その診察結果が悪かったために(後に捏造されたものと分かる)仕事を引き受けることにする。
パリの地下鉄で標的の男を教えられ、尾行して、人気のない駅のエスカレーターで射殺した。
二度目の殺しの依頼は、ミュンヘン発列車内で殺し屋を始末すること。車内トイレの攻防に危うかったが、秘かに後をつけていたトムの助けで成功させる。
しかしミノから、マフィアに嗅ぎつけられたらしいと聞き、二人はトムの屋敷で、マフィアの襲撃を迎え撃つ準備をする。
何とかマフィアを始末し、その死体を救急車に積んでいるところに、ヨナタンの妻が車で来て、その車と共に人気のない浜辺に行き、救急車を爆発・炎上させる。
帰りの足にと付いて来させた車だったが、ヨナタンはトムを置き去りにして走り出し、意識朦朧のヨナタンは車線をはずれ、路肩を飛び越えるが、助手席の妻がブレーキをかけて急停止させる。しかしその時、ヨナタンは息絶えていた。



《感想》ヨナタンは自分の病状に不安を持ち、残される妻子のために危険な仕事を引き受ける、切なさ一杯の真面目男。
トムはビジネスに長けた詐欺師だが、人懐っこい一面があり、家族持ちのヨナタンがうらやましくもある孤独な一匹狼。
そんな二人の友情物語である。
プロの殺し屋ならもっとスマートに仕事をこなすのだろうが、素人仕事なので観客はハラハラしながら見守ることになる。
いくらお金欲しさとはいえ、物静かな職人が殺し屋に変身するという非現実的な展開には呆れもするが、その未完成な殺しが緊張感を生んでいることは確かで、これもサスペンスの面白さかと思う。
映像では、ハンブルグの青い街並み、淡い色の浜辺、赤い車、その際立った色使いと美しさが印象に残る。
また導入部の贋作(?)画家のエピソードも面白い。
稀少性で値を上げる作戦だが、わずかな変化で贋作と見抜く眼力は凄い。
だが、目利きには分かる程度の青色の変化を付け、“疑惑”を生むことを期待する画家の心理は更に面白い。騙し合いを楽しんでいる風である。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。