マフィアの抗争に巻き込まれた農民の慟哭を描く
《公開年》2014《制作国》イタリア
《あらすじ》イタリアの都市ミラノに住む麻薬ディーラーの三男ルイジ(マルコ・レオナルディ)、ルイジと行動を共にし、その金で事業を展開している二男ロッコ(ペピーノ・マッツォッタ)。長男ルチャーノ(ファブリツィオ・フェラカーネ)は弟たちと違い、生まれた地元でヤギの飼育や野菜作りなど堅実で平穏な暮らしをしていた。
三兄弟が生まれ育った南イタリアのカラブリア州はマフィア組織が拠点とする地域で、これまでも抗争が多く、三兄弟の父も三男の目の前で射殺されていた。
ルチャーノの息子レオ(ジュゼッペ・フーモ)は真面目な父親に反発し、ルイジに憧れて悪事をする毎日である。
そのレオが、何かと敵対するファミリーに対し、銃で威嚇する行動に出たことから、抗争の火種がくすぶり始める。
ルイジが甥っ子レオのしでかした行為に対する落とし前を付けに地元に戻り、逆に敵対組織に射殺され、その仇を討とうと親友二人で出かけたレオだったが、友の裏切りにあい命を落とす。
残る二男ロッコは仲間を集め、いよいよ本格的な抗争に……と思いきや、ルチャーノが思いがけない行動に出る。何と弟ロッコや仲間を射殺してしまう。
海辺では、裏切り者である息子の友人がヤギ追いをしている、その姿でエンド。
《感想》息詰まる緊張のラスト30分の衝撃が凄い。
かつて父親を殺され、今度は弟(三男)と息子を失い、自分の血を呪いながら、いま闘いに臨もうとする二男を射殺する、その決断に至る心理描写が重く、切ない。
跡取り息子を失った絶望と、平和な暮らしを奪ったマフィアそのものへの怒り……その自暴自棄のはけ口は、弟やその仲間に向けられる。
やられたらやり返す、マフィア同士の争いはどちらかがつぶれない限り終わることはなく、平和な家庭は壊され、裏切りは続く。自分たちの組織が無くなれば争いも消える、それが苦渋の末に至った結論だった。
組織間の抗争という無限ループから抜け出したい思いと、家族を失ったその怒りの矛先が身内に向かってしまうやり切れなさが、この冷酷非情な銃撃によって、彼の慟哭であるかのように伝わってくる。
マフィア同士の抗争を描きながら、何よりも平和を望む農民目線を崩さない描き方をしていて、それがラストのメッセージにつながっている。
しかしながら、クライマックスに至るまでの展開が地味過ぎる上に、すぐには登場人物の関係性や、ファミリーの背景が呑み込めないので、かなり辛抱を強いられる映画である。
渋く暗く重い、一般受けしそうにないが、観終わってみると凄い人間ドラマであることを実感する。
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