『ユージュアル・サスペクツ』ブライアン・シンガー

嘘と緻密な伏線で味わう騙される快感

ユージュアル・サスペクツ

《公開年》1995《制作国》アメリカ
《あらすじ》
1)冒頭は「昨夜」、マフィアの密輸船が爆発・炎上して、カイザー・ソゼによってキートン(ガブリエル・バーン)が射殺されるシーンから始まる。
2)その「6週間前」:銃器強奪事件の面通しのため、5人の“常連の容疑者(ユージュアル・サスぺクツ)”が集められた。
元汚職刑事のキートンに加え、強盗のコンビ、爆弾製造のプロ、それら“大物”以外に、詐欺師で足の悪いキント(ケヴィン・スペイシー)の姿があった。
※以下、「現在」行われている船の爆破現場調査と生存者の事情聴取、警察でのキントの供述と、「過去」の回想が交互に描かれる。
3)「過去」:警察で顔を合わせ、手を組むことになった5人の最初の仕事は、警察のタクシーサービス(汚職警官の副業で密輸売人の送迎をしている)を襲撃することだった。
それに成功した5人は、別グループの誘いで宝石商襲撃事件を実行し、3人を殺害してしまうが、中身は宝石ではなく麻薬だった。
そして、カイザー・ソゼの使いを名乗る弁護士コバヤシが現れ、5人は麻薬取引船(実は麻薬でなく人の取引をしている)襲撃をすることになる。
船に麻薬はなく、そこに居たのは、ソゼの悪業を知り有罪に出来る証人と、ソゼを裏切った元の手下だった。それらの証人を殺害し、仲間を殺した狙撃者はやせたスーツの男(コバヤシ?)だった。
4)「現在」:冒頭(昨夜)のソゼによるキートン殺害のシーンに戻る。
しかし、その後キートンの姿は消え、警察はキートンをカイザー・ソゼと見ていて、事情聴取を受けていたキントは軽罪で警察を出る。
キントが警察を出た後、供述に出てきたコバヤシは陶器のカップメーカーの名前であり、供述が“全くの作り話”に気付き、同時に(生存者の供述で作られた)ソゼの似顔絵がFAXで送られてきて、それはキントに瓜二つだった。
警官は外に出たキントの後を追うが、キントはコバヤシの車に乗り込み消え去った。



《感想》マフィアのボスであるカイザー・ソゼなる人物は居るのか居ないのか?そして誰なのか?
この謎解きが、シナリオに仕組まれた、現在と回想が交差する奇妙な時間差で、後からフワリと浮かび上がってくる構成になっている。
大どんでん返しという訳ではなく、散りばめられた伏線で何となくその予感はするのだが、結果としてキントの嘘八百に振り回されただけで、ラストは衝撃というより痛快だった。
時間軸がそのまま描かれたらベタな推理ものの域を出なかったと思うのだが、思わせぶりな時間の揺らしで、観客を混乱に陥れる仕組みになっている。
この嘘ばっかりの内容と複雑な時間軸の展開は、二度観しないと理解できないほどマニアックな作りで、アカデミー脚本賞(クリストファー・マッカリー)を受賞し、他にケヴィン・スペイシーが助演男優賞を受賞している。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があり、そこに喜びがあります。鑑賞はWOWOWとU-NEXTが中心です。高齢者よ来たれ、映画の世界へ!