『華岡青洲の妻』増村保造 1967

若尾対高峰、嫁姑バトルの愛憎心理劇が凄い

《あらすじ》名家の娘・加恵(若尾文子)は、医師華岡直道の妻・於継(高峰秀子)に請われて、後の青洲こと雲平(市川雷蔵)の嫁になる。
於継は気品のある美しい人で、加恵にとっては憧れの人だったが、雲平は医学修業の遊学中で、三年間は夫のいない結婚生活を強いられ、学資稼ぎの機織り仕事をする毎日だった。
やがて雲平が戻ると、於継の加恵に対する態度が一変する。
於継が妻の加恵を押しのけて雲平の世話を焼くため、加恵は秘かに於継に敵意に似たものを抱くようになる。
雲平は青洲と名を改め、医学の研究に没頭していたが、その対象は手術に用いる完全な麻酔薬を作ることだった。
やがて青洲の妹・於勝が乳がんを患い、切開手術をしてくれと懇願するものの、薬は完成しておらず、於勝は死去し、青洲は唇を噛んだ。
その頃、青洲の研究は動物実験の段階ではほぼ完成に近く、あとは人体への効果を試すだけだったが、それは容易なことではない。
すると於継が自分で実験して欲しいと申し出、加恵も同様に申し出た。
意を決した青洲は二人に人体実験を施し、実験は成功だったが、強い薬を与えられた加恵は副作用で失明した。
青洲はやがて全身麻酔によって乳がんの摘出手術をすることに成功し、その偉業の裏に加恵と於継の献身的な協力があり、秘かな二人の対立が隠されていたのだった。
目が見えない身となった加恵と青洲が、大きくなった医院を眺めてエンド。

《感想》嫁と姑の対立、そのプライドを賭けた情念の凄まじさが静かな火花となって伝わってくる。
息子可愛さの姑の感情は分かるのだが、嫁の心境の変化というのが興味深い。
憧れる女性に嫁と呼ばれたいが故に、会ったこともない男と結婚し、やっと結婚生活に入ったら夫を姑にとられそうで張り合い、夫の仕事のための献身競争で失明してしまう。
姑は嫁に嫉妬し、嫁は憧れていた女性の豹変ぶりに敵意を抱き、静かに対立が深まっていく。高峰の凄味ある演技に、若尾の負けん気の強さも負けてはいない。まさに名演。
それに比べると、妻と母を犠牲にしながら青洲の苦悩はあまり伝わってこない。仕事の成功のためなら見て見ぬ振りをする男の狡さ、したたかさが垣間見られ、演じる雷蔵のクールさもあって、一層際立っている。
原作に忠実にという、新藤兼人脚色の生真面目さもあるのだろうが、物語は淡々と展開していき、舞台やテレビドラマから抜け出していない。
(猫の動物実験のシーン以外は)増村らしいドロドロ感も薄く、特に後半は淡々とし過ぎていて感情移入しにくかった。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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