『スワロウテイル』岩井俊二 1996

不思議世界に描かれる、架空の街の過酷な青春

《あらすじ》娼婦だった母を亡くし、歌手を夢見る娼婦グリコ(Chara)に引き取られて、アゲハという名前をもらった少女(伊藤歩)は、“円都(イェンタウン)”に住む“円盗(イェンタウン)”のフェイホン(三上博史)やラン(渡部篤郎)たちが経営する何でも屋「青空」で働き始める。
ある夜、グリコの客でヤクザの須藤がアゲハに手を出し、フェイホンの仲間が誤って須藤を殺してしまい、その死体から「偽造1万円札のデータが入ったカセットテープ」が見つける。
同じ頃、中国マフィアのリーダー・リャンキ(江口洋介)もそのカセットを持ち逃げした須藤を探していて、リャンキの情報からテープの正体を突き止めたフェイホンたちは大金を掴んで、グリコの夢であるライブハウスをオープンさせ、彼女を大スターに仕立て上げる。
そんなある日、アゲハは仲間たちと試した覚醒剤で意識不明になり、通りかかったリャンキに助けられ一命をとりとめるが、そこでリャンキがグリコの生き別れの兄であることを知る。
一方、グリコとフェイホンの仲を裂こうとするグリコのマネージャーは、入国管理局にフェイホンの密入国を密告し逮捕させるが、フェイホンは釈放にこぎつけ、何とか街に戻ってくる。
そしてグリコのために身を引き、手切れ金を受け取り、そのことがバンドメンバーの激怒を生んで、店は閉鎖に追い込まれてしまう。
以前は一つだったみんなの心が離れていくのを何とかしようと考えたアゲハは、再び偽札を使って大金を手に入れ、店の権利を取り戻そうとするがうまくいかない。
一方、売り出し中のグリコも娼婦時代の過去を掴んだ週刊誌記者に追いかけられ、リャンキの手下一味からもカセット奪還で追われる。
グリコ救出に向かったフェイホンは、その途中で偽札作りの犯人と間違われて逮捕され、留置所で命を落とす。
「青空」に逃げ込んだグリコは、手下たちに取り囲まれ窮地に陥るが、ランの一撃で彼らを全滅させる。そして、フェイホンの遺体を引き取り荼毘に付したグリコとアゲハは、手に入れた大金を全て焼き払い、一から出直そうとする。

《感想》架空の街「イェンタウン」には、貧しい若者たちが暮らしていた。
グリコは娼婦をしながら歌手を目指し、フェイホンはグリコの歌を愛し、その夢を実現させようと必死になる。
そしてアゲハは、彼らに救われて成長し、彼らの生き様、価値観に共鳴している。皆、未熟で、現実世界に不満を持ちながらも、ぼんやりした夢を抱いていた。
そうした若者たちのコミュニティは、イェンタウンという小さな世界では平和を維持できていたが、突然大金を手に入れて夢を実現し、外界との関わりを持った途端、混乱と崩壊へ突き進んでしまう。
街に亀裂が生まれる中、楽しかった生活を取り戻したいアゲハはお金を集めるが、その夢は叶わず、慕っていたフェイホンの遺体とともにお金を焼き払う。
お金で現実からの脱却や新しい境遇は実現できても、本当に欲しいものはお金で買えなかったということだろう。ママにならない切なさである。
やはり不思議世界ではある。英語、中国語、日本語が入り混じる不思議な会話劇、確かに豪華キャストなのだが、実在感がないというのか、誰もが演じている雰囲気の空間、これが岩井ワールドか。支持派とアンチ派に大きく分かれる。
私もハマり切れなかったが、伊藤歩(当時16歳)の過酷な中で成長し挑戦していく、その笑顔一つない眼差しに魅かれた。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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