空想男が真面目さから冒険の旅に出て“虹を掴む”話
《公開年》2013《制作国》アメリカ
《あらすじ》空想癖がある中年男・ウォルター(ベン・ステイラー)は「LIFE」誌の写真管理担当をしていて、経営難の「LIFE」の休刊が決まり、最終号の表紙は大物写真家ショーン(ショーン・ペン)の写真で飾られることになった。
ショーンは25番のネガを使うよう指示して、財布をプレゼントし、写真撮影の旅行に出かけてしまうが、フィルムを確認すると25番だけが無く、ウォルターは世界中を旅する写真家を追いかけることになる。
秘かに恋心を抱く同僚でシングルマザーのシェリル(クリスティン・ウィグ)に協力を仰いで現在地を掴み、北極圏のグリーンランドに行くが既に移動していて、アイスランドの火山地帯を追うが、噴火に巻き込まれて逃げるように一時帰国し自宅に戻る。
するとシェリルは既に解雇され、ウォルターもクビになっていて、シェリルの元を訪ねると元夫らしい男が出てきて、落ち込んだウォルターはショーンからプレゼントされた財布をごみ箱に投げ捨ててしまう
ふと、欠番ネガの前後に写っていたのが「我が家のピアノ」であるのに気づき、ショーンが我が家を訪れていたこと、母親から行き先がアフガニスタンであることを知り飛び立つ。
アフガニスタン部族長に会ったウォルターはヒマラヤに登り、そこでユキヒョウを撮影するショーンに会うことが出来る。
ショーンの遊び心から探していたネガは、ショーンからプレゼントされた財布の中に入っていて、ウォルターははずみでその財布をごみ箱に捨てていたことに気付く。
ところが、捨てたはずの財布を母が拾い保管していて、ネガを無事ボスに渡すことが出来た。そして、「LIFE」誌最終号の表紙を飾ったのは、ネガを真剣にチェックするウォルターの姿だった。
解雇手当をもらいシェリルに話しに行くと、前に会ったのは元夫ではなく勘違いだと言われ、二人の間も急接近して、店頭に並んだ「LIFE」誌を見ながら手をつなぐ二人の姿でエンド。
《感想》かつてのダニー・ケイ主演『虹を掴む男』(1947年)のリメイク。
空想癖のある男の話なので、現実と妄想が交錯し、荒唐無稽なのだが、仕事、家族愛、恋愛、冒険、旅での出会い等々、話題が盛り沢山で、ついその世界に引き込まれてしまう。
サメが登場するシーンでは恐怖をあおられ、度を越したおふざけに笑い、リストラされる中年サラリーマンの悲哀にはシンミリする。このバランスがいい。
確かに、都合が良過ぎる展開はやや強引で、オチ(ネガのありか)に少し無理があるし、最終号の表紙には、劇的な人生でもなく地道に仕事に取り組んできただけの男が写されていて、誰もが「何故?」と思うはずである。
しかし、そこには「これを作った人々に捧げる」というコメントが添えられ、表舞台にいる写真家と、それを支える裏方の心が通じた、最終号にふさわしいメッセージと受け止めて納得した。仕事に真剣に取り組む姿は素晴らしいし、そんな人を表舞台に出したい、誰もが人生の主役なのだ、というような。
荒唐無稽なファンタジー・コメディなので、リアルな冒険話にワクワク感情移入する映画ではないが、少し距離を置いて観ると、旅の風景・映像、流れる音楽、しゃれたストーリー展開、全てが心地良くて、リピートしたくなる映画である。
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