『インサイダーズ / 内部者たち』ウ・ミンホ

韓国政界の裏側を、明るく激しく猥雑に描く

インサイダーズ 内部者たち

《公開年》2015《制作国》韓国
《あらすじ》ヤクザのアン・サング(イ・ビョンホン)は大手新聞社の論説主幹イ・ガンヒ(ペク・ユンシク)の弟分として、彼の命令で政治家のための汚れ仕事を請け負っていた。ガンヒは立場を利用して政界と財界、マスコミを裏で巧みに操っていた。
ある日、サングは財閥企業・ミライ自動車が大統領候補チャン・ピル議員に裏金を送ったファイルを手に入れ、そのファイルをガンヒに渡したのだが、要らぬ一言が元で、実は裏でミライ自動車とピル議員を操っていたガンヒの罠にはまり、見せしめに片手首を切断されてしまう。
一方、財閥と政治家の癒着を暴こうとしていたウ・ジャンフン検事(チョ・スンウ)は、裏金ファイルがサングの手に渡ったことで、裏金捜査が打ち切りになり、責任を取らされて左遷になって、おまけに人脈やコネがないため出世も出来ず、復讐の牙を研ぐサングに近づく。
二人して腐った奴らを告発しようと頑張るが、サングが告発するもガンヒに世論を操作されて収監され、脱獄してガンヒを襲撃し掴んだ告白も脅迫として証拠にはならなかった。
それではと、ジャンフンはガンヒに接触し、癒着グループに仲間入りすることに成功して、悪人たちの下劣な宴会を隠し撮りする。
その映像をネットで公開し、ジャンフンが内部者として全てを告発し、悪人は全員が失脚した。
数か月後、検事を辞めて弁護士事務所を開いたジャンフンの元に刑期を終えたサングが訪れ、勝利を喜びあってエンド。



《感想》原作は韓国のウェブ漫画で、政治の裏にうごめく汚職や癒着を巡って、検事、ヤクザ、ジャーナリストといった3人の男たちが壮絶な騙し合いを展開する。
悪人と復讐者の構図がハッキリしていて、かつどんでん返しの展開の面白さもあり、笑えるところもあって、最後は爽快だった。
韓国映画にありがちなドロドロした情念の世界とはかけ離れた、ストーリー重視の娯楽性に徹していて、個々の人物世界に深入りしない分、少し物足りなさも感じた。
しかし、残酷な暴力シーンや、「本当かな?」と思わせるかなり下品な性接待宴会シーンが登場するので注意を要する。
この明るい猥雑さはアメリカ映画の影響か。描く世界は違うが、スコセッシ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に雰囲気が似ているように思えた。

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投稿者: むさじー

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