他愛ない会話に青春のホロ苦さが漂う
《あらすじ》瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)という二人の男子高校生が、川辺の石段に腰掛け、ひたすらオシャベリをしている。
1)セトとウツミ:他人を見下す内海に瀬戸が「神妙な面持ち」をしろと言うが、二人とも出来ない。川辺に佇むおじさんが気になっているが、そこに近づいて来たのは暴力番長・鳴山で、おじさんから手渡したのは離婚後最後の養育費。礼を言う番長に二人とも神妙な面持ちになる。
2)アメとムチ:女性をメロメロにする方法は「自己肯定感を高めてやること」と内海は言う。あとは肯定と否定、共感と反感をバランス良く取り入れればいい。なるほど。
3)イカクとギタイ:アフリカオオコノハズクは自分より弱い相手には羽を広げて大きく見せ、強い相手には羽をすぼめて細く見せようとする。人間も同じ。
4)内海想の出会い:二人が出会ったのは、走り回ったりクリエイティブな行動を嫌悪する内海と、暗黙のルールを破ってサッカー部を退部せざるを得なくなった瀬戸の「利害関係が一致しただけ」だった。
5)先祖と子孫:夏休みの夜、パラシュート花火が不発に終わり、「自分たちの人生もこんなもんだ」と人生を悲観的に見ている二人。お盆、先祖、檀家と日本の伝統文化を重んじ、幽霊を信じる内海を茶化す瀬戸だったが、時間差で火のついた花火が瀬戸に当たり、まさに“バチ当たり”だった。
6)瀬戸小吉の憂鬱:瀬戸の父は「俺はもうあかん」を口癖にするダメ親父で、母との間に離婚話があり、祖父は認知症と徘徊癖があって入院中の祖母をずっと探している。「一人で生きたい」と呟く瀬戸の前に、倒れ込む父と助けようとする母の姿があり、いい夫婦の様相である。大人になるというのは、コミュニケーション能力を高めることだと思う。
7)出会いと別れ:瀬戸の誕生日に愛猫ミーニャンが死んでしまい落ち込む。生前辛いとき猫に当たって「早く死んでしまえ」と悪態をついたことを深く反省していると、三―ニャン似の猫が現れ、詫びの言葉を絶叫する。
8)樫村一期(いちご)の想い:一期(中条あやみ)は寺の娘で、妹の名は一会(いちえ)。内海に想いを寄せる一期と、彼女が好きな瀬戸の微妙な恋模様。全くオチはなし。
《感想》二人の男子高校生がオシャベリを繰り広げるだけという、漫画を原作とするユニークな青春映画。
他愛のない会話を繰り返し、何の生産性もない青春のリアリティが感じられ、暇をつぶすだけの青春に切なさとほろ苦さ、そして共感を覚えてしまう。
含蓄の有無はともかく、結構練られたセリフ回しと、微妙な間がいい。
テレビアニメ『紙兎ロペ』に似ている。『ロペ』は3分程の尺なので間が取りにくいためか、終始シュールな会話でつないでいくが、本作は間もあって、話の突然の飛躍もある。
漫然と観ている分には面白いのだが、劇場で1800円払わされたら、腹が立つかも知れない。
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