『お父さんと伊藤さん』タナダユキ 2016

緩めだが本音、キャラで魅せるホーム・コメディ

《あらすじ》山中彩(上野樹里)は34歳で本屋勤務、伊藤さん(リリー・フランキー)は54歳で学校給食の調理員、ともにアルバイトで生計を立て同棲中だが、そこへ、兄家族との折り合いが悪い彩のお父さん(藤竜也)74歳が転がり込んでくる。
頑固で昔気質の父は、一日中外出し、商店街をまわり、図書館で時間をつぶし、夕方は明りの消えていく小学校を見つめ続けていた。
小学校の教師をしていた父は、母の死後一人暮らしをしていて、健康不安から兄家族と同居して現在に至るが、徐々に別の顔が明かされていく。
万引きの常習犯であり(痴呆と思われ大目に見られていた)、盗んだのはスプーンやフォーク等の小物雑貨で、それを宝物のように大事にしていたことが後に分かる。
そして父は生家のある田舎へ家出をし、兄妹が追いかけ、田舎に住み続けるという父を説得しようと、伊藤さんを交えて話し合うが結論が出ず、翌日東京に帰ろうとした矢先、雷が庭の木に落ちて家が燃えてしまう。
父は2か月入院し、退院しても気落ちした日々を送るが、火事を知った昔の教え子の訪問を受け、“立派な先生”だった頃の元気を取り戻す。
そして「家を出て有料老人ホームに入る」と宣言して去って行った。
父の背を見送る彩に伊藤さんは「俺は逃げないから」と言葉をかけ、父を追いかける彩の姿でエンド。

《感想》現代版『東京物語』のストーリーだが、雰囲気は全く別物で、少し緩めだが面白い。
何より三人のキャラが立っている。
元教師で勤勉実直さを絵に描いたような父と、30歳過ぎても結婚・就職するでもなく、ダラダラとぬるま湯の暮らしをする娘。
気難しい父親と、それにイライラする娘の間に立って、二人の仲をうまく取り持とうとするのが娘のパートナー伊藤さんで、飄々と生きながら時折正論を吐き、凄味すら感じさせることもある。
お父さんから「(生家に)一緒に住まないか」と誘われ、「何故他人の自分が面倒をみなければいけないのか。甘え過ぎだ」と一喝する。
家族だから言えることもあるが、家族であるが故に、意地を張ったり素直になれず言えないこともある。なかなか言えない他人の本音でスッキリする。
まさに達観し、超越した“他人としての生き方見本”のようである。
謎に包まれ正体不明の中年男をリリー・フランキーが絶妙に演じる。
しかしてその正体は?と思いきや、謎のまま終わってしまった。
軽妙にして味わい深い、ホーム・コメディの佳作。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

「『お父さんと伊藤さん』タナダユキ 2016」への1件のフィードバック

  1. 韓国から遊びに来ました。やっぱり日本の映画は日本人の感性で読まなければならないと思います。そういうことで日本人はこの映画から何を感じたのか知って欲しかった。
    やっぱりこれか?
    人間として感じられるものは別に違ってないですね。

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