『ミスティック・リバー』クリント・イーストウッド

謎解きより、運命と罪を描いた人間ドラマ

《公開年》2003《制作国》アメリカ
《あらすじ》犯罪社会から足を洗い雑貨店を営むジミー(ショーン・ペン)、家族と共に平凡な毎日を過ごすデイヴ(ティム・ロビンス)、刑事のショーン(ケヴィン・ベーコン)の三人は、同じボストンで少年時代を過ごした幼馴染だが、彼らが11歳のとき、デイヴが性的暴力を受けた事件を境に疎遠になっていた。
25年後、ジミーの娘ケイティが遺体で発見され、ショーンがその事件を担当する。また、今もトラウマに悩まされ、事件当夜血まみれで帰宅したデイヴに妻のセレステは不安を抱く。
警察やジミーの犯人捜査が続く中、セレステはジミーに夫が犯人だと思うと告白する。
デイヴは少年に悪戯をしている変質者を殴り殺したと主張するが、ジミーは娘の復讐をするべくデイヴを呼び出し、ついにデイヴに娘殺しを自白させ、殺害して川に沈めた。
しかし、事件の真相は違っていた。真犯人はケイティの恋人ブレンダンの弟・レイと友人の少年で、兄がケイティと駆け落ちすると知って、障害のある自分は捨てられると思いケイティを殺害したものだった。
デイヴの主張は真実で、後に殴り殺したという男の死体が発見される。デイヴの命乞いの自白からかつての友人を殺したジミーは、激しい悔恨の念に打ち震える。
刑事ショーンはデイヴの失踪をジミーの仕業と見るが、深く追及はせず、自首する道を選ぶか、罪の意識を背負って生き続けるのか、ジミーに判断を委ねた形でエンド。

《感想》観客を混乱させているのは“二人のレイ”の存在ではないか。
殺されたケイティの恋人ブレンダンの父が「ただのレイ」というあだ名の男で、ブレンダンの弟が真犯人の「レイ」という設定が話をややこしくしていると感じた。
ジミーはかつて「ただのレイ」に裏切られ、刑務所に入り、出所後、ジミーは「ただのレイ」を殺し、行方不明の扱いとなっている彼に代わって、ブレンダンと弟レイあてに養育費を送っていた。
ラストでショーンがジミーに対し「(デイヴの妻)セレステにも毎月送金するのか」と投げかけるが、ショーンには二人(「ただのレイ」とデイヴ)の失踪の真相が全て見えていたと分かる。
ケイティ殺しの犯人を追うミステリーの要素に、今はそれぞれに平和な暮らしを送っている三人の男が、事件をきっかけに再び関わらざるを得なくなり、引きずってきた過去が明るみになる、そんな人間関係のアヤが絡んでくる。
だからラストは、逮捕されて終わりではなく、ジミーに自首するか否かの判断を委ねるという秀逸のエンディングになっている。
ショーンがジミーに向かってピストルを撃つマネは、刑事の立場を忘れて童心に帰ったかのようだ。
三人の少年時代に受けた傷と、運命としか言いようのない再会。過去の傷に端を発したデイヴの殺人、二人の人間を殺したジミーは罪を抱えてこれからどう生きるのか、ショーンはジミーの罪を知りながら何故黙っていたのか。
救いのない結末だが、謎を秘めた三人の罪を巡る重い人間ドラマだった。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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