『殺人の告白』チョン・ビョンギル

時効を盾の犯人に迫る怨念の復讐劇

殺人の告白

《公開年》2012《制作国》韓国
《あらすじ》1986~90年に連続女性殺人事件が発生し、時効が成立する2005年、事件を追っていたヒョング班長(チョン・ジェヨン)は犯人に傷つけられ逃げられてしまう。
そして、この事件で母を殺され、ヒョングを兄のように慕っていたプロボクサーのヒョンシクは自殺してしまった。
それから2年、犯人を名乗るドゥソク(パク・シフ)が手記『私が殺人犯だ』を出版しマスコミを賑わす。
騒いだのはマスコミや警察だけでなく、遺族の会は私怨を燃やし、毒蛇を使った復讐や誘拐を試みる。
テレビでドゥソクとヒョング班長を迎えての討論会が行われ、そこへ「J」と名乗る男から犯人を匂わせる電話がかかってくる。
その男から示されたのはヒョング班長の血痕が付いたナイフと、誘拐されていて消息不明だったスヨンという女性(後にヒョングの恋人と判明)が映ったビデオテープだった。
「J」はドゥソクやヒョングとテレビ対談をすることになる。
生放送中、「J」の指示で山中の樹木の根元を掘ると、スヨンの遺体が発見されスタジオ内は騒然となる。
ドゥソクは犯人でないことを明らかにし、本はヒョングが書いたもの、そして母を殺され自殺したはずのヒョンシクが実は生きていて、整形手術でドゥソクになっていたと明かす。
ヒョングはスヨンが映った映像から、「大統領選」の情報を聞き取り時期を特定し、まだ時効が成立していないことを「J」に伝えると、「J」は逃走を図りカーチェイスとなる。
逮捕された「J」は、ヒョングの手にした毒針で殺され、ヒョングは刑務所へ。刑期を終えて出所するヒョングを遺族の会が出迎えてエンド。



《感想》2017年の日本版リメイク『22年目の告白~私が殺人犯です』と比較すると面白い。
韓国版は第二の告白者がそのまま犯人だが、日本版は、概ねストーリーは踏襲しているものの犯人像が異なり、更に一ひねりした意外な人物で、背景の動機などに社会性を加味している。
韓国版の犯人は単に猟奇殺人者なのだが、日本版では戦場ジャーナリストのトラウマが犯行の動機になっていて、更に現役テレビキャスターという設定に、意外性とサスペンスの面白さが見て取れる。
更に大きな違いは映画自体の作りで、韓国版はカーチェイスやアクション描写に重きを置いているのに比べ、日本版はアクション控え目で、真相究明までの推理サスペンス色を強く(ドンデン返し付きで)描いている。
ただ、連続殺人そのものが猟奇であり狂気の為せる業であれば、“謎解きで軽め”の日本版より、“猟奇的でストレート”な韓国版の方にリアリティを感じてしまう。
家族第一主義の韓国らしい「遺族の会」の登場、ただの狂人でしかない犯人は被害者家族に殺されてしまうあたり、怨念を抱えた人間のドラマとしても深いのではないかと思えてしまう。
両作品とも持ち味が違って面白い。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があり、そこに喜びがあります。鑑賞はWOWOWとU-NEXTが中心です。高齢者よ来たれ、映画の世界へ!