『ジーサンズ はじめての強盗』ザック・ブラフ

老人たちの暴走は、少し苦く後味爽やか

ジーサンズ はじめての強盗

《公開年》2017《制作国》アメリカ
《あらすじ》ジョー(マイケル・ケイン)は銀行で融資担当者ともめているとき、銀行強盗に出くわす。
30年勤務した会社が統合で消滅し、企業年金がもらえなくなったジョーは、元職場仲間で近所に住むウイリー(モーガン・フリーマン)、アルバート(アラン・アーキン)に銀行強盗をやろうと持ちかける。
仮に捕まったとしても刑務所行きで、住まいと食事が保証されて失うものはない。もし成功したら金が入ると。
まず手始めは万引きと、スーパーで試みるがバレバレで、店長の説教で解放されたが、プロの指導が必要と悪い奴を探し、身体を鍛え、実行のためのトレーニングに取り組む。
さらにジョーたちは地元の慈善カーニバルに参加し、アリバイ作りをした上で、いざ実行に移す。
強盗は成功するが、監視カメラ映像から万引きしたスーパー店長に気付かれ、警察に連行される。
強盗の際、ウイリーがマスクの一部をはずし顔を見られていたため、銀行に居合わせた少女の面通しが行われた。
ところが、ウイリーが孫娘のプリントされた誕生祝の時計をしていたため、自分と同じ年頃の孫がいることに気付いた少女の機転で救われる。
そして事件はうやむやになる。
3人は金を手に入れ、各々が抱える問題を解決し、残りは老人のために寄付をし、仲間に配ってハッピーエンド。



《感想》「フツーのジーサンたちが、大胆な犯罪者に……」というたわいもない話を、ユルユルのコメディに仕立て上げただけなのだが、3人の抱える問題(家族との同居、病気、金欠)がユーモラスに描かれている。
大金を手に入れても豪遊するわけでなく、ごく普通の幸せな生活のために使い、残りは周囲の幸せのために配るという。
お金は必要だが、お金があればハッピーというわけではない、その“いい塩梅”を示す3人の姿が、爽やかなエンディングになって、「人生、悪くない」と思わせる。
銀行強盗に「年寄りを敬うのは社会の義務だ」と言わせるあたり、風刺も効いているし、明るくホノボノとしたタッチと、テンポがいい。
大物俳優の余裕が、細かい話は抜きと言いきかせ、温かい笑いを生んでいる。
あり得ない話だが、名優3人だけでなく、脇を固めたベテラン俳優もぴったりハマっていて、十分に楽しめる映画だった。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。