『戦場のピアニスト』ロマン・ポランスキー

戦場で出会った二人の、音楽の交流と運命を描く

戦場のピアニスト

《公開年》2002《制作国》仏、独、英、ポーランド
《あらすじ》1939年、ナチス・ドイツのポーランド侵攻が始まり、ワルシャワに住むピアニスト・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)の身にも危険が及ぶ。
ドイツ軍のユダヤ人迫害によって住み慣れた家を追われ、やがて強制収容所に送られる中、シュピルマンは知り合いの警察署長に助けられ、ゲットー内の労働に従事することになる。
迫害は日に日に強まり、シュピルマンはゲットー脱出に成功するが、ポーランド人の助力を得ながらも、わずかな食糧で食いつなぐ生活を余儀なくされる。
ワルシャワの街は壊滅状態になり、シュピルマンは廃墟に逃げ込み、そこで一人、残されたピアノでベートーベン『月光』を弾いているドイツ軍将校ホーゼンフェルト(トーマス・クレッチマン)に出会う。
ホーゼンフェルトに求められて、ショパン『バラード』を演奏するシュピルマン。お互いの音楽に感動し、気持ちを通わせる二人だった。
ホーゼンフェルトの差し入れで生き延びたシュピルマンだったが、やがて終戦が訪れ、ホーゼンフェルトは捕虜の身に、シュピルマンはピアニストの生活に戻っていった。
そして、ホーゼンフェルトは1952年、捕虜収容所で亡くなり、シュピルマンは2000年、88歳の生涯を閉じた。



《感想》ポーランド人監督が、ポーランドの作曲家ショパンの楽曲を使って、戦争の悲惨さ、憎しみを超えた交流を生む音楽の力を、実話をベースにして描いている。
近年のいわゆるナチスものに比べると、実話ゆえの説得力と、実話ゆえの単調さ(物語性の不足)が感じられる。
ナチスの迫害は容赦なく繰り返され、彼の家族や周囲の支援者はことごとく死んでいき、廃墟と化した街で、ピアノを弾く以外に才能を持たない男が、たまたま音楽を愛する敵国将校と出会うことで生き延びる。
戦時下という過酷な状況にあっても、音楽は国境を超えて、人に生きる喜びをもたらしてくれるが、戦争という巨大な力はその喜びさえも奪っていく。
音楽を愛する敵国将校は終戦後、捕虜となって命を落とし、主人公ピアニストは周囲の人々の死をよそに、ピアニストとして大成し長寿を全うする。まさに戦争に翻弄された二人の運命である。
戦争がなかったら、共に音楽の世界で理解し合えたであろうに、それを思うと切なさが迫ってくる映画であり、戦争がもたらす不幸、虚しさを描き尽くしている。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。