『灼熱の魂』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

運命に翻弄された母子の愛と赦しの物語

《公開年》2010《制作国》カナダ
《あらすじ》初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)は死の間際、双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)、シモン(マキシム・ゴーデット)に謎めいた遺言と二通の手紙を残した。
死んだと聞かされていた「父」と存在すら知らなかった「兄」に宛てたものだった。姉弟して父と兄を探すことは、母の人生を追体験することでもあった。
母は若き日、宗教的に対立する難民の男と恋愛をし、妊娠、駆け落ちまでするが、その途中で男は射殺され、その後生んだ息子とは引き離されてしまう。
その後も内戦は続き、思想に染まっていったナワルは、暗殺者となり、キリスト教右派指導者を殺害し、15年の禁固刑で投獄され、拷問人による暴行で拷問人の子を妊娠し、獄中出産する。
母親が拷問の末に妊娠・出産したことを知った姉弟は、その子どもこそ「兄」だと考えるが、更にそのときの子が双子であったことも知る。
息子には別れの際、タトゥーを入れていた。同じタトゥーを入れた男と母親は再会する。その衝撃はすさまじいものだった。
タトゥーの男こそ母親を犯した拷問人で、生まれた子どもが姉弟だったわけで、その男は兄であり、父であった。
その男に二通の手紙を渡すが、そこには拷問人に真実を知らしめる内容と、息子への愛の言葉が綴られていた。
そして姉弟への手紙には、「あなたたちの誕生は恐ろしい物語。あなたたちの父親の誕生はかけがえのない愛の物語」と記され、怒りの連鎖を断ち切ることが出来たと告げている。
残された「父と兄」そして姉弟はこれから先も悩み苦しむだろうが、母の愛(拷問人に対しては赦し)によって、それぞれ強く生きていくであろうことを予感させてエンド。

《感想》父と兄を探す姉弟の視点と、母ナワルの若き日の視点が交互に描かれて、物語は展開する。
とにかくヘビー過ぎる内容だったが、謎解き、ミステリーとしては一級品なので引き込まれてしまった。
そして、全ての真実が明るみに出た後の、ナワルの愛の言葉が感動を呼ぶ。
作りすぎ、リアリティ欠如の評価があるようだが、この練り込まれたシナリオと明確なメッセージに迷いはなく、多くの観客に感動を運ぶはずである。
“面白いおすすめ作品”とは言い難いが、衝撃的問題作として残る映画だと思う。話の構成が素晴らしいし、最終的には愛と赦しで締めたことも救いになっている。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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