『婚約者の友人』フランソワ・オゾン 

戦争と男の嘘に翻弄され、女がついた嘘と切ない別れ

《公開年》2017《制作国》フランス、ドイツ
《あらすじ》1919年、第一次世界大戦後のドイツ。婚約者ハインツを失ったアンナ(パウラ・ベーア)はハインツの両親と暮らしている。
すると、フランツの墓に花を手向け涙する外国人の男の姿があった。
アンナは男の所在を突き止め家に招く。彼はアドリアン・リヴォワール(ピエール・ニネ)というフランス人で、フランツがパリに留学した当時の友人らしい。
アンナやフランツの両親とアドリアンの交流が深まってきた矢先、アンナはアドリアンから驚きの告白を受ける。アドリアンとフランツは敵として戦場で鉢合わせをし、アドリアンがフランツを射殺したという。
アドリアンが明日ドイツを発つ前に両親に話すというので、翌朝アドリアンを待っていたアンナは「両親には私から伝えた」と言い、両親には「アドリアンは母急病の知らせで急きょ帰った」と話した。
アドリアンは列車でパリに帰り、絶望したアンナは湖で入水自殺を図り未遂に終わる。
しばらくして、パリのアドリアンからアンナあてに手紙が届くが、同封された両親あての手紙は燃やし、両親には彼が元気に暮らしていると嘘の内容を話した。
アンナは自分の嘘に悩み神父に告解する。「黙っているべき?」神父の答えは「生むのはさらなる苦悩、さらなる涙のみ」。
アンナがアドリアンに出した手紙は住所不明で戻ってきて、両親から確認のためフランスに行くよう勧められたアンナは、それに従ってパリに向かった。
訪ね歩いて、アドリアンの実家で再会する。しかし、母親とともにそこに居たのはファニーという幼なじみの婚約者で、傷ついたアンナはアドリアンに別れを告げる。
アンナから両親あての手紙には「アドリアンに再会できて親交を深めている。まだしばらくは帰れない」という嘘の内容が綴られていた。
パリ・ルーブル美術館のマネ「自殺」の絵の前で、男性客の問いに「この絵が好きよ。生きる希望が湧くの」と答えるアンヌの姿でエンド。

《感想》導入では、謎の外国人の登場で「何者か?」の疑惑が湧いてサスペンスタッチだったが、ハンサムでナイーブなアドリアンにアンヌが好意を寄せたところで正体が暴露され、アンヌは両親にもアドリアンにも嘘をつく板挟みの立場になる。
男と女の感情のすれ違い。女心を解さない男に振り回される女。
そして男は殺した男の両親から許されたと思い、母親の勧める婚約者と幸せに。それに引き換え女は、故郷に残した親代わりの期待に応えられない引け目にまた嘘をつく。どこまでも切ない。でも強く生きていくのだろうという予感はする。
男のズルさ(?)ばかりが尾を引いて、スッキリはしないが面白い展開ではあった。ヒロインの感情の盛り上がり(失意からときめきへ)でモノクロからカラーになるのも新鮮に映った。
マネの「自殺」が重要なモチーフとして登場するが、絵が持つ「死」のイメージから、自分の生とか活力とかを確認して、ヒロインが言う“希望が湧く”ということなのだろうか。他にも解釈がありそうだが、謎のままである。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です