孤独な少年棋士の成長と家族のドラマ。前・後編通して観よう。
《あらすじ》〔前編〕幼くして両親と妹を交通事故で亡くした桐山零(神木隆之介)は、父の友人だった棋士・幸田柾近(豊川悦司)に内弟子として引き取られ、17歳のプロ棋士となった零が師匠幸田との対局で勝利するところから始まる。
幸田家には姉香子(有村架純)と弟歩がいて、香子はプロ棋士を目指していたが、零に叶わなくなり、父から将棋をやめるよう言われたことから、父や零との間に確執が生まれて、零が家を出て一人暮らしを始めた。
ある夜、体調を崩し道端で倒れた零は川本あかり(倉科カナ)に助けられ、川本家の三姉妹や祖父との交流が始まる。
そして、川本一家と出かけた初詣で香子とプロ棋士・後藤(伊藤英明)に会い、不倫関係にあることを知る。
零はタイトル戦の一つ獅子王戦でその後藤との対局を目指すが、その前にA級八段の島田(佐々木蔵之介)に敗れてしまう。しかし、新人王タイトルは獲得した。獅子王戦はタイトル保持者・宗谷(加瀬亮)に島田が挑戦し惜敗するが、零だけには逆転の一手が見えていた。
〔後編〕それから1年。棋士の世界にも様々な変化が現れ、師匠幸田はケガで不戦敗を喫し、後藤は入院している妻の容態が悪化し、ライバルで友人の二海堂(染谷将太)は難病を抱えていた。
一方で川本家には家族の一員のように訪れていたが、次女ひなた(清原果耶)が学校でイジメにあったり、かつて妻子を残して蒸発した父親が戻ってきたりといった事件が発生する。
川本三姉妹を守ろうとする零は、自分勝手な父親を感情的に非難したことが家族との間に溝を作ってしまい、足を運ぶことをやめてしまう。
川本家を失った零と、妻を病気で亡くした後藤が獅子王戦決勝に臨み、後藤優勢で展開したが、悩み苦しみながら粘った零が見事に逆転勝利を収める。
勝負を終えた零はすぐさま川本家に向かい、謝罪をして家族に温かく迎えられる。負けた後藤を迎えたのは香子だった。
零が宗谷とのタイトル戦に臨み、対局開始でエンド。
《感想》前編は孤独な少年棋士・桐山零たち将棋界の群像劇で青春編。対局のシーンが多く、将棋界に疎い者でも、対局中のにらみ合いや号泣はドラマの盛り上げのための演出過剰にしか見えず、川本家との交流、幸田家との確執も深みに至っていない。
後編は川本家・幸田家の家庭内トラブルやイジメの問題に遭遇した零が、関わるうちに成長していく家族編。後編になると家族ドラマ、人間ドラマに傾くのだが、やや詰め込みすぎで、イジメも「父帰る」の収束も性急に過ぎる感は否めない。
どちらかと言えば後編の方がいいが、これは通して観るしかない。
原作漫画のファンには低評価のようだが、神木の好演もあって、孤独な少年が勝負の世界で力強く生き抜いていく様や、人情家族と出会って心豊かな青年に成長していく様は、ドラマとして引き付けるものを持っている。
しかし、エピソードの描き方が表面的で軽すぎる印象はぬぐえない。
倉科カナの明るさ、美しさが光っていた。また、染谷将太のデブデブの特殊メイクは全く別人に思えた。
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