『クラッシュ』ポール・ハギス

差別と偏見の街で、愛を見つけたそれぞれの物語

《公開年》2004《制作国》アメリカ
《あらすじ》冬のロサンゼルスで、2人×7組の物語が展開する。
1)雑貨店を営むペルシャ系移民のファハドと娘のドリは、銃器店主からアラブ系移民と勘違いされて差別的扱いを受け、ドリが「赤い箱の銃弾」を買う。
2)検事のリックと妻のジーン(サンドラ・ブロック)は、(3)二人の黒人アンソニーとピーターに偏見の目を向け、怒った二人にRV車を奪われる。
4)ロス市警の刑事ブラハム(ドン・チ―ドル)と相棒のリアは、麻薬捜査官コンフリンが黒人刑事ルイスを射殺した事件を追っていた。
2)自宅に帰ったジーンは、安全のため玄関の鍵を取り換えに来た(5)メキシコ系の鍵職人ダニエル(マイケル・ペーニャ)を悪党と決めつけ、彼や夫に当たり散らす。
6)巡回中の差別主義者の白人警官ライアン(マット・ディロン)と相棒のトムは、(7)黒人TVディレクターのキャメロン(テレンス・ハワード)と妻のクリスティン(タンディ・ニュートン)のRV車を止め、妻にセクハラ訊問をする。そんなライアンに嫌気がさしたトムは相棒を解消する。
5)自宅に戻ったダニエルは、銃声に怯える愛娘に“何も通さないマント”の話をし、架空のマントを着せてやる。
1)5)ファハドが営む雑貨店の鍵修理に来たダニエルは、ファハドと喧嘩になりそのまま帰ってしまう。その後、店が何者かに荒らされ、ファハドは全てダニエルのせいだと逆恨みする。
4)ブラハムたちはルイスの車内から大金を見つけ、彼がコカイン中毒者だと知るが、二人の保身と点数稼ぎからコンフリンを犯罪者にしてしまう。
7)6)クリスティンが車で事故を起こして、反転した車内に閉じ込められ、救出に駆け付けたライアンを当初拒絶するが、命がけで助け出したライアンに感謝する。
7)3)6)キャメロンはアンソニーとピーターに脅されてもみ合い、キャメロンはアンソニーを乗せ車で逃走するが、追う警官に捕えられ、トムに助けられる。
1)5)ファハドはダニエル宅で彼に銃口を向けるが、“マントを着ていない”パパを心配した娘が飛び出してかばい、その瞬間銃声が響く。撃たれたはずの娘に傷はなく、「赤い箱の銃弾」は空砲だった。
3)6)4)ピーターはヒッチハイクでトムの車に拾われるが、些細なことからトムに
勘違いされ射殺されてしまう。トムはピーターの死体を草むらに放置して車を燃やす。殺されたピーターは、刑事グラハムの弟だった。
2)ジーンは怪我をし、今まで軽蔑していた貧民層の家政婦の優しさに気付く。
3)アンソニーは自分で轢いて怪我をさせた中国人の車に、多くのアジア系移民を見つけ、人身売買されそうな彼女らを街で解放してエンド。

《感想》多くの人種が混ざり合う街・ロサンゼルス。そこで繰り広げられる人種間の軋轢によるエピソードが、時間軸に沿って展開し、少しずつ絡み合っていくという群像劇である。まず、その脚本の緻密さに驚く。
差別主義者の白人警官は老いた父の看病に疲れ、上流階級夫人は貧困層との関りにストレスを抱え、黒人TVディレクターは黒人として生きる屈辱と困難さに直面して妻との間に深い溝を作り、黒人刑事は非行に走った弟と彼を溺愛する母親を持ち孤立を極めてしまう。
白人警官からセクハラまがいの扱いを受けた黒人女性は、憎んでいた警官の助けを拒絶するが、必死の説得に応じて助けられ、やがて感謝につながる。
若い刑事は正義感に燃えるが些細な誤解から殺人を犯し、白人を敵視するチンピラは身売りされようとする移民を助ける。そして、細々と暮らす移民たちは自らの生活を守ることに躍起になり、それでも優しさを忘れない。
人種のるつぼと言われる街では、些細な不安や誤解からときに亀裂が生まれるが、それを断ち切る勇気や優しさが和解の道を作っていく、そんなメッセージを込めて(ピーターの死と関係者の嘆きを除けば)温かい余韻のエンディングになっている。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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