戦争に潜むエゴや愚かさ、無力感をシニカルに描く
《公開年》2001《制作国》仏、伊、英、ベルギー、スロベニア
《あらすじ》ボスニア紛争の最中、両軍がにらみ合う中間地帯付近で、ボスニア軍8人が移動中に道に迷って敵軍の砲撃を受け、チキ(ブランコ・ジュリッチ)は塹壕に逃げ込み、ツェラ(フィリップ・ショヴァゴヴィッチ)は吹き飛ばされて瀕死の状態、他の6人は即死だった。
そこへ偵察を命じられたセルビア軍の新人兵ニノ(レネ・ビトラヤツ)とベテラン兵が訪れ、意識のないツェラの下に、動くと爆発するジャンプ式地雷を仕掛けるが、隠れていたチキにベテラン兵は殺され、ニノは傷を負うが生き残る。
やむを得ず、ツェラの救出とこの状況から抜け出すためにチキとニノは協力し、二人して裸になり白いシャツを振って助けを求める。対応に苦慮した両軍は国連防護軍に協力を依頼し、駆け付けた防護軍のマルシャン軍曹は塹壕に入ってチキたちと接触する。
ところが、本部から地雷処理班の出動は拒否され、防護軍と一緒に塹壕を離れようとしたニノの足をチキが銃で撃って、一時は和やかだった二人の仲は再び険悪になってしまう。そして三人を塹壕に残して離れた防護軍は、無線を傍受して集まったマスコミに取り囲まれ、塹壕の取材を容認することになる。
マスコミの力で防護軍の地雷処理の担当兵が駆け付けるが、ツェラの下にある地雷は一度仕掛けると処理不可能だと言う。しかもマスコミが騒ぐ中、チキはニノに向かって発砲し、同時にチキは防護軍によって射殺されてしまう。
防護軍は、撤去できなかった地雷について処理終了、二人の兵(実は遺体)については病院に急送、という虚偽の発表をしてマスコミを退去させ、軍も塹壕から立ち去る。そして塹壕には地雷の上で身動き出来ないツェラが一人残されてエンド。
《感想》地雷の上に寝かされたツェラの存在を軸に、自分たちの立場を守ろうと画策し偽装する防護軍、独占映像取材に奔走するだけの傍観者としてマスコミが描かれ、その結果、兵士はみな死んでしまい、生き残った者も見離されて為す術がない状況に陥ってしまう。
それは、笑うに笑えない、戦争とはこんなものという風に、皮肉一杯に戦争の愚かさを嘲笑している。そして戦争の残酷さ、争いの外側にいる者の無責任さも浮き彫りにしている。
この映画を観て思うのは、戦争でどちらか一方の善悪は語れないし、争いを鎮めることがいかに困難かということ、そして当事者、傍観者誰しもが持つであろう無力感である。
笑いで包んでいるのだが、単に反戦だけでなく、ヒューマンドラマとして深いメッセージと説得力を持った良作である。
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