『レザボア・ドッグス』クエンティン・タランティーノ

寄せ集め強盗団の裏切りと末路をスタイリッシュに描く
レザボア・ドッグス
《公開年》1992《制作国》アメリカ
《あらすじ》強盗のために集められ、お互い“色”を使ったコードネームで呼び合う素性を知らない男6人と、ボス親子が無駄話をしながら朝食をとっているシーンから始まる。
朝食が済むと早速ダイヤモンド強奪を実行し、6人のうちブラウンは死亡、ブルーは行方不明になってしまう。撃たれて重傷のオレンジを乗せたホワイトが待ち合わせ場所の倉庫に到着すると、そこへピンクが現れ「この強奪計画は警察のおとり作戦だった」と言い出し、互いが疑心暗鬼になる。
やがて銃を乱射するためクレイジーと言われるブロンドが、拉致した警官を連れて現れ、倉庫内で拷問を始める。ボスの息子エディも来て、ホワイトとピンクを連れダイヤモンドの回収に向かう。
倉庫にはブロンドと重傷のオレンジ、警官が残され、ブロンドの警官への拷問がエスカレートして焼き殺そうとしたため、オレンジがブロンドを射殺し、自分がおとり捜査官だと警官に話す。
エディたちが帰り、オレンジはブロンドが裏切ったと説明するが嘘であることが見抜かれ、駆け付けたボスのジョーとともに三すくみの状態になる。
ジョーはオレンジに、オレンジを信頼するホワイトはジョーに、エディはホワイトに銃を向け、やがて3人とも銃を発射し、ジョーとエディは死亡、ホワイトも重傷を負う。
結局ピンクがダイヤモンドを持って逃走し、オレンジは自分が警官だということを明かしたため、裏切られたホワイトは彼に銃を向ける。駆け付けた警官の呼びかけとともに、倉庫内に銃声が響き渡りエンド。



《感想》1994年の「パルプフィクション」に先立つタランティーノ28歳の監督デビュー作。
次作「パルプフィクション」では、極端な時系列シャッフルで混乱させられるが、本作では時間軸(現在と過去)を巧みに織り交ぜながら、パズルのようにはめ込んでいって、話を少しずつ繋げていき、ラストまでの流れを作っている。
内容はシンプルにして乱暴なのだが、登場人物のキャラ設定が際立って巧みで、役者もそれにしっかりハマっている。特に生き残った4人、オレンジに射殺される銃乱射男のブロンド、最後にダイヤを持ち逃げした抜け目のないピンク、親子のような感情と信頼関係で繋がっていたホワイトと潜入捜査官のオレンジ。
だから共に重傷を負っている二人のラストシーンが心に残る。オレンジから自分が潜入捜査官だという告白を聞いた時のホワイトの悲痛な心境は如何ばかりか。ホワイトはオレンジを撃ってしまったのか。ピンクは逃げおおせたのか。すべて謎であるが、あえて描かず何かと想像させるのもタランティーノ流である。
暴力描写も凄いが、倉庫の中の舞台劇のような空間で、会話だけでドラマを作ってしまう脚本の力も凄い。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。